第9章 会社への復帰


 押されていた元会長派は少しずつではあるけれど、その勢力を取り戻していた。男の子が生まれて、これで一歩優位に立ったぞと村上常務は考えていた。
 (映見の娘である裕美の結婚相手も我が派から出せれば。まだ高校生だが、あと3年たてば卒業だ。そのあたりを目処にして相手を見つけておこう)
 村上常務は早速裕美(映見)の婿捜しを始めていた。

 映見(郷一郎)がマンションに戻ってきた1週間がたった。子どもは、達明と名付けられ、すくすくと育っていた。
 いつものように達夫と理香(鈴木)を交えて、夕食を取っていたとき、映見(郷一郎)が突然達夫に向かって言いだした。
 「あなた、理香の味はどうだった?」
 「え? ああ、いつも美味しいよ」
 煮物を箸でつまんで答えた。
 「そうじゃないわ。ベッドでの味はって言う意味」
 達夫はぎょっとして映見(郷一郎)の顔を見た。
 「理香と寝たんでしょう」
 「あ、い、いや・・・」
 「わかってるのよ。わたしが理香に頼んだの。あなたの浮気封じにって」
 「俺が浮気なんてするはずがないだろう?」
 「そうは思ったんだけどね。理香があなたのこと、好きだって言うから、話に乗ったのよ」
 理香(鈴木)は違うわと言いかけたけれど、映見(郷一郎)に睨まれて口を閉じた。
 「おまえが戻ってきたんだ。もうやるつもりはないよ」
 「そうなの? わたし、まだセックスできないわよ。当分我慢するつもりなの?」
 もちろんだとも達夫は答えた。
 「理香が寝たいって言ったら?」
 達夫は理香(鈴木)を見た。
 「理香、達夫と寝たいんでしょう?」
 「奥様が許していただけるのなら」
 理香(鈴木)の反応から、映見(郷一郎)は理香(鈴木)が達夫と寝たがっていることを察した。
 「あなた、どうする? 理香はあなたと寝たがっているし、わたしはそれを許している。障害はどこにもないわ」
 「本当にいいのか?」
 「悪かったら、こんな提案はしないわ。わたしがセックスに応じられない間、理香を抱いていいと言うことよ」
 達夫は嬉しそうに残りの料理を平らげていった。

 理香(鈴木)が片付けをしている間に達夫は入浴し、映見(郷一郎)は達明を寝かしつけている。達夫と入れ替わりに達明を寝かしつけた映見(郷一郎)が入浴する。最後に理香(鈴木)が入浴をすませた。
 「じゃあ、始めて。わたし、ここで見ているから」
 ベッドのそばにチェアを持ってきて座り、映見(郷一郎)はふたりに命じた。
 「見られている方が感じるでしょう?」
 達夫は映見(郷一郎)の方を見てから、理香(鈴木)を抱き寄せた。
 「そんなに硬くならないで、いつものようにやりなさいよ」
 ベッドの上でキスから始めたふたりだったけれど、やがて硬さが取れ、そこに映見(郷一郎)がいることを忘れてセックスに集中し始めた。
 「理香、フェラチオが上手ね」
 映見(郷一郎)自身よりも上手いなと思った。
 「あなた、理香は生理が終わったばかりだから、今日は中出ししても構わないわよ」
 そのために、映見(郷一郎)は今日まで待っていたのだ。コンドームを取り出して袋を破ろうとしていた達夫は袋を小箱に戻して、生ペニスを理香(鈴木)の腟口に宛がった。
 映見(郷一郎)は達夫のペニスが理香(鈴木)の膣の中にズブズブと埋まっていくのをじっと見ていた。
 (AVを見るのと同じね)
 抽送のたびに理香(鈴木)の膣から粘液が漏れ出ていくのを見ながら、自身の膣が濡れてくるのを感じていた。
 (女も見て感じるんだ)
 映見(郷一郎)は、女はAVを見ないものだと考えていたから、新たな発見だった。ふたりが体位を変えるたびに映見(郷一郎)は見ている場所を変えて、特に結合部分を見ていた。
 「ああ、行きそうだ」
 達夫がそう呻くのを耳にして、出して、出してと映見(郷一郎)が叫んでいた。達夫が呻き、理香(鈴木)に腰を押しつけている。理香(鈴木)はその瞬間、身体を仰け反らせてううんと小さく呻いた。
 逝ったみたいだなと映見(郷一郎)は思った。その時映見(郷一郎)も逝っていた。セックスできない間、いつもふたりのセックスを見ていようと考えていた。

 映見(郷一郎)が自分の前で達夫とセックスしろと言いだしたときには理香(鈴木)は心底驚いていた。けれど、映見(郷一郎)がいたら達夫とセックスできないと思っていたから、大歓迎だった。
 そんな心を表には出さず、映見(郷一郎)の命令だから仕方がないと言うような様子を装いながら、達夫と唇を合わせた。その時には理香(鈴木)はすでに濡れていた。
 映見(郷一郎)にフェラチオが上手ねと言われたけれど、それは理香(鈴木)が達夫のことが好きになった結果だった。
 生で貫かれるのは初めてで、しかも中出ししてもいいと言われ、理香(鈴木)は貫かれた瞬間、すでに逝っていた。
 抽送されている間にも何度か逝っていた。そして、中出しされた瞬間、理香(鈴木)は完全に逝っていた。
 (こんな幸せがいつまで続くんだろう?)
 達夫とできなくなることが怖かった。

 初参りが終わると、達明を理香(鈴木)に預けて、映見(郷一郎)は達夫と会社へ向かった。新しいプロジェクトのプレゼンテーションを達夫がすると言うので、見学と言う明目だった。
 (まだまだね)
 映見(郷一郎)だったらこうやると言うことを考えながら、達夫のプレゼンテーションを聞いていた。
 「ちょっと失礼」
 映見(郷一郎)はついに手を挙げた。
 「マーケティングが少し甘いと思うんですけど、いかがでしょうか?」
 妻が夫の不備に言及するとはみんな考えていなかったようで、驚いたように映見(郷一郎)の方を見た。
 「住民の人口はわかっていても、年齢構成によっては、用意する商品が変わってくると思うんです。いかがでしょうか?」
 達夫にどうなってるんだと重役から質問が飛んだ。達夫はしどろもどろだ。同席している村上常務は渋い顔をしている。
 次のプレゼンテーションは社長派の人物だったけれど、映見(郷一郎)は何も言わなかった。3番目のプレゼン手ションは旧会長派の人間だった。このプレゼンテーションに映見(郷一郎)は噛みつき、完膚なきように叩きのめされ、プロジェクトを根本的に作り直す羽目になってしまった。村上常務の表情は渋いどころの話ではなくなっていた。

 その日の夕刻、巧は妹夫婦の住むマンションに井上常務と共に降り立った。
 (オートロック式は面倒だな)
 そう考えながら、呼び鈴を押した。
 《はい、どなた?》
 「巧だけど、ちょっといいかな?」
 一瞬間があって、どうぞと返事がありドアが開いた。巧は井上に目配せして一緒にドアを通り抜けた。
 エレベーターで上がり、今度は玄関のチャイムを鳴らした。
 「あら? 常務も一緒なの?」
 「ちょっといいかな?」
 どうぞと答え、映見(郷一郎)は奥に向かって、社長さんが来たわよと達夫に声を掛けている。
 「社長! ようこそ。今晩はどのようなご用件で?」
 「いや、映見に話がありましてね」
 達夫の方を見ずに映見(郷一郎)に対峙した。
 「今日のプレゼンでの映見の発言にいたく感激してね。なあ、井上常務」
 その通りですと井上常務が頷く。
 「井上常務と話したんだが、映見にはオヤジ譲りの経営能力がるんじゃないかと言うことになってね」
 「そんなことはないわよ」
 「いやいや。謙遜しなくてもよくわかってるんだ。でだね。映見に会社の経営戦略部顧問になって貰えないかなと考えてね」
 「え? 経営戦略部の顧問に?」
 「そうなんだ。役員にとも考えたんだが、今のところは顧問として働いて貰い、環境が整ったら、役員に登用するつもりだ。どうかな?」
 映見(郷一郎)は達夫の方を見た。
 「あなた、どうしよう?」
 「俺が決めることじゃないだろう? 映見がやりたかったら、やればいい」
 映見(郷一郎は)考える仕草をする。
 「我が二宮グループのために一肌脱いでくれよ。妹が会社経営に参画してくれれば、兄としても心強い」
 井上もその通りですと同意した。
 「わかりました。お兄様のお願いですから、協力しましょう。で? いつから仕事に出れば?」
 「あ、来週の頭からと言うことで。しかし、お子さんの方はどうしますかね?」
 「大丈夫です。しっかりしたメイドがいますから。あら? お茶もお出ししないで。理香! 理香! どこにいるの?」
 ややあって、理香(鈴木)が出てきた。
 「いらっしゃいませ。お坊ちゃまを寝かしつけておりましたので」  そう言い訳をして、キッチンの入っていき、コーヒーの準備を始めた。
 「もう帰りますので、お構いなく」
 理香(鈴木)に向かって巧が言うと、お茶くらい飲んでいっても罰は当たらないわと映見(郷一郎)がふたりを留めた。
 理香(鈴木)が入れたコーヒーを飲みながら、これで村上たちの攻勢をそぐことができるなと巧は考えていた。
 確かに映見(郷一郎)が達夫と結婚したことで、旧会長派の勢いが盛り返してきたことは疑いのないことだった。映見(郷一郎)が巧の傘下に入ったことで、その勢いがそがれるのは間違いなかったのだ。
 巧は結果に満足して映見(郷一郎)のマンションをあとにしたのだが、映見(郷一郎)が巧の申し出に乗ったのには考えがあった。
 今のままでは、旧会長派のただの飾りに過ぎない。二宮グループを再び手中に収めるには、なんとかして会社入り込まなければならないと考えていたのだ。そこへ顧問の話だ。映見(郷一郎)は諸手を挙げて引き受けたわけだ。

 翌月曜日、本社経営戦略部の中に、スカートスーツに身を包んだ映見(郷一郎)の姿があった。
 「今日から経営戦略部の顧問に就任した村上映見君だ。よろしく頼む」
 巧が経営戦略部の全員を前にして映見(郷一郎)を紹介した。
 「村上映見です。今日からよろしくお願い致します」
 映見(郷一郎)が頭を下げる。部内のほぼ全員が、社長の妹だから仕方がないかと言うような表情を浮かべた。
 特に経営戦略部の山形部長は、こんな小娘に何ができるんだと考えていた。
 (先週のプレゼンでの発言は確かに当を得ていたが、フロックに決まっている。社長も愚かだな)
 巧をあまり評価していない山鹿はそう考えていた。

 映見(郷一郎)はその日のうちに始動した。立案段階のプロジェクトにすべて目を通し、ABCの判定を下したのだ。
 すなわち、Aは原案通り、Bは修正を加えた上で再検討、Cは計画そのものの練り直しであった。
 そのいずれもが的確であり、職員はぐうの音も出ず、映見(郷一郎)の能力を認めざるを得なかった。

 映見(郷一郎)が仕事に出るようになって、家事全般、育児、そして夜の達夫との性生活すべてが理香(鈴木)に掛かってきた。
 本来は映見(郷一郎)に仕えることが目的だったのに、大きく変わってしまっていた。
 (セックスはイヤじゃないけど・・・)
 少し不満ながら、達夫とのまるで夫婦のような暮らしに満足し始めていた。

 映見(郷一郎)を巧に絡め取られてしまった村上常務は、次なる手として、裕美(映見)を手に入れることを考えていた。裕美は、映見の娘と言うことになっているけれど、実は郷一郎の娘だとわかっていたからだ。
 そう言うことだから、村上は早苗を通して、村上の甥である村上丈一郎を裕美(映見)に宛がおうとしていた。
 (丈一郎は現在28、裕美が卒業するときには30になってしまうが、裕美さえよければ問題はないだろう)
 そう言うことで、巧を含めた社長派に知られないように家庭教師と言う明目で二宮の屋敷に行かせることにした。
 大学の研究室で燃料電池の研究をしていた丈一郎は女子高生の家庭教師と聞いて難色を示した。
 「亡くなった会長の奥様のたってのお願いなんだ。頼めるのはおまえしかないんだよ」
 村上常務にそう説得され、丈一郎はいやいやながら面接に出かけていった。
 (うへっ! 美人じゃないか)
 裕美(映見)を初めて見たとき、丈一郎は虜になっていた。
 (伯父貴仁言われなくても、落とさなきゃ)
 裕美(映見)に気に入られて、逆玉を狙おうと丈一郎は心に決めていた。

 裕美(映見)は家庭教師なんていらないと早苗に抗議したけれど、今の成績じゃ大学どころか高校卒業も覚束ないと説得され、こちらも渋々ながら面接に同席した。
 (へえ、イケメンじゃないの)
 丈一郎が村上常務の甥だと言う情報は裕美(映見)に届いていた。つまり、政略結婚を目論んでいることは明々白々だと感じていた。
 (けど、この人ならいいわ。どうせ、凡人とは結婚させて貰えないだろうから)
 翌週から、丈一郎が得意な理数系教科を中心に家庭教師が始まった。裕美(映見)は理数系教科が特に苦手だったから、家庭教師としては最適だった。
 裕美(映見)の成績は最低位置から伸びて中位くらいまで上がり、それなりの大学に進学できるレベルになっていった。

 高校2年になったクリスマスイブの夜、裕美(映見)と丈一郎はあるホテルのスイートルームにいた。
 ルームサービスでホテル最高級のディナーをふたりで取ったあと、そのままベッドルームへ移動した。
 高校二年になったときから裕美(映見)は丈一郎とキスしたり、服の上から愛撫させたりしていた。この日は初めての本格的なセックスだった。
 キスしながらお互いの衣服を脱がし合っていく。裸にした裕美(映見)をベッドに押し倒しながら、丈一郎はその素晴らしい肉体に感嘆していた。
 (服の上からもスタイルはいいだろうと思っていたが、想像以上だ)
 裕美(映見)の方も丈一郎の厚い胸板、シックスパックの腹筋に惚れ惚れとしていた。
 (イケメンだし、こんな素晴らしい身体を持った男は初めだわ)
 もちろん、今の裕美(映見)は男性経験があるなどと言うわけにはいかない。あくまで処女なのだ。
 愛撫は進み、クンニされる。そこはすでに洪水状態になっていることは裕美(映見)は自覚していた。
 クンニされながら、挿入された指でGスポットを刺激されて裕美(映見)は何度か逝っていた。
 挿入体勢に入った丈一郎を裕美(映見)は止めた。
 「フェラして欲しい?」
 「やれるのか?」
 「やってみたいの。上手くできるかどうかわからないけど」
 もちろん丈一郎はその言葉を信じたけれど、裕美(映見)としてはフェラチオ抜きのセックスなんてあり得なかっただけだ。
 (久しぶり)
 丈一郎のペニスを掴み、舌を這わせ、唇を使って擦る。さらに口の中に収めて、頭を振った。
 「ああ、すごい。裕美ちゃん、上手だよ」
 その言葉に裕美(映見)はつい夢中になってやり過ぎたかなと反省しつつ、勉強してきた甲斐があったわと答えた。
 「勉強した?」
 「ううふ。ネットでね」
 丈一郎はなるほどねと納得し、仰向けになった裕美(映見)を貫いた。
 「い、痛い・・・」
 裕美(映見)自身、挿入されて痛むなんて思ってもみなかった。痛みに耐えながら、若返って処女に戻ってたんだと思い、ほくそ笑んだ。
 映見として生きていたとき、処女はどこかの会社の社長に10万円で売った。その時も痛んだけれど、今日の痛みは愛する人とのセックスだから、違った痛みだった。今は、喜びの痛みだった。
 丈一郎に射精されたとき、少しだけ逝ったような気がした。そして、嬉し涙が零れた。過去の映見が消え去ったと感じたのだ。
 「丈一郎、好きよ。愛しているわ」
 「ボクもだよ」
 裕美(映見)の膣から漏れ出てきた鮮血を見ながら、丈一郎はそう答えた。



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