第5章 進む女性化


 身体に起こっている変化が、若返りだけではなく女性化であることがわかって、郷一郎はある意味ホッとしていた。訳がわからない変化ほど怖いものはないからだ。
 (計画を変更しないといけないな)
 その計画とは、若返って二宮グループに就職し、出世して社長の椅子を取り戻すと言うものだ。郷一郎のこれまでの過去の業績を考えれば、それは容易だと思っていた。けれど、世間はそう甘くはないだろうなとも考えていた。
 (女になった利点を使えば・・・)
 出世しそうな男に取り入り、結婚してその男を繰り、会社を間接的に支配すると言うものだ。これならいけそうだと考えた。
 (何しろ儂が女になれば、絶世の美人だろうからな)
 絶世の美人とまでは行かなくても、かなりの美人に変身することは間違いないだろうと思っていた。
 (問題は年齢だな)
 55歳相当の郷一郎が20-25歳若返ったとき、30-35歳になる。
 (最近の女性は晩婚だからいいか?)
 そんなことを考えていた。

 女性化の完了は半年から2年になると電話で言っていた。
 (2年も掛かるとお婆ちゃんになってしまうが)
 けれど、幸いなことに郷一郎の女性化はいくぶん早いように思えた。
 「また縮んだね。168よ」
 身長を測って映見がそう言う。
 「もうすぐわたしと同じくらいになるかな?」
 映見の身長は161だ。郷一郎は悪くない身長だと思っていた。ただ、体重は68キロある。女性化で痩せるだけではダメだと考えて、これまでの運動に加えてダイエットもしている。
 髪の毛は伸び続け、肩に届くようになっていた。
 「外出できるようになったら美容室に行きましょう」
 そう言いながら映見は伸びた髪の毛をゴムバンドで結んだ。
 「胸が少し出てきたかな?」
 郷一郎の少し膨らんだ胸に両手を当てて、映見は嬉しそうに言う。
 「もう少し大きくなったら、ブラが必要ね」
 「ブラジャーしないとだめか?」
 「一度着けてみたらわかるわ。ブラジャーがどれくらい機能的か」
 ブラジャーを着けた自分の姿が想像できず、郷一郎はため息をついた。
 「いくら美人でも、寸胴だと持てないわよ」
 と言うことで、ウエストニッパーなるものを郷一郎は着けさせられた。なにもしないでウエストが細くなるとは思えなかったので、素直に従った。
 「そろそろお化粧の練習もしておきましょう」
 反対する理由がない。スッピンの女性が悪いと言うわけではないけれど、郷一郎は女性は化粧しなければならないと考えている。化粧でより美が引き立つからだ。
 毛抜きで眉毛を整えられ、わずかな顔の産毛を剃られてから化粧が始まった。映見の化粧はどちらかと言うと少し派手目だ。ただ、それが女性化しつつある郷一郎にはよく合っていた。
 「やり方をよく覚えておいてね。ずっとわたしがやるわけにはいかないんだから」
 そう言うことで、最初の数回は映見にやって貰ったけれど、その後は郷一郎自身が化粧をやった。
 「上手くいかないな」
 「だんだんよくなる法華の太鼓。毎日やっていたら少しずつ上手になるわ」
 そんな映見の言葉に励まされて、毎日化粧の専念した。
 「声の方はどうやら、なにもしなくていいみたいだけど、言葉遣いは女の子らしくしないと」
 若返りの薬のお陰で、喉仏は消え去り、声も苦労なく女性のような高い声に変わっていた。映見が言うように、話し方が問題だった。
 なれない女言葉は少し油断すると男言葉に変わってしまう。それも時間だなと思っていた。
 (ともかく映見がいてくれて助かる)
 映見がいなかったら、女性として生きるための方途取得がかなり困難になっていただろうと郷一郎は思った。

 朝目覚めると郷一郎は着ていたネグリジェを脱いだ。
 「そんなださいパジャマなんて止めなさいよ。女の子はネグリジェよ」
 数日前、有無を言わさず、パジャマを取り上げられてネグリジェを着て寝ることを強要されたのだ。身長が縮み、パジャマの裾があまるようになっていたから、言われるままネグリジェを着るようになっていたのだ。
 そのネグリジェを脱いで、いつも着ているタンクトップに着替えようとするとタンクトップがない。あったのはブラジャーだった。
 戸惑っていると、そろそろブラジャーが必要でしょうと映見が言った。郷一郎は胸を見下げた。そこにはAカップほどに育った胸がある。
 「した方がいいかな?」
 「もちろんよ。パッドも入れてあるから」
 郷一郎はショッキングピンクのブラジャーを手に取るとストラップに腕を通した。
 (はあ、ブラジャーを着けることになるなんて)
 わかっていたこととは言え、郷一郎はため息を吐いた。カップを胸に当て後ろ手にホックを留める。
 「後ろで留められるなんて関節が柔らかくなってるわね」
 男だったら後ろ手で留めるのが無理なのかなと思いながらストラップを調整した。
 「これも履くの?」
 同じくショッキングピンクのショーツをつまみ上げる。映見はノーパンでもいいわよと面白そうに答えた。
 頬を膨らませながら郷一郎はそのショーツに足を通した。ペニスも睾丸もまだ存在したけれど、小さくなっていたせいかすっきり収まった。
 郷一郎は置かれている服に目を落とした。
 「これも?」
 「そろそろなれておかないと」
 前ボタンのワンピースだった。足を通して、1分袖に腕を通してボタンを留めた。鏡を見て結構いいなと思った。
 「足元が心許ないわね」
 「でも、女らしくていいでしょう?」
 否定できない郷一郎だった。その日以降、なれるためだと言って映見はスカートばかりを取り出して郷一郎に着せた。ジーンズのパンツもあるのに。
 スカートのお陰で、郷一郎の仕草は一段と女らしくなっていった。

 身長は164センチになった時点で縮むことは止まり、それ以上低くなることはなかった。体重は、54キロまで絞った。これには映見もたいそう褒めてくれた。
 胸も育っていき、Cカップになった。映見が言ったようにブラジャーは女性にとって必要なものだと郷一郎は実感できた。
 スリーサイズは85-60-88となっていた。
 (美人になったし、このスタイルなら、男はいちころだな)
 鏡を見ながら郷一郎はニタッと笑った。
 (こいつはいつになったらなくなるんだ?)
 両足の間に残っている突起を見ながら郷一郎はため息をついた。ここまできたら、いっそのことない方がいいと感じたからだ。

 睾丸は徐々に小さくなっていき、若返りの注射をして3ヶ月目には完全に消え失せていた。ペニスも縮んでいき、5センチほどになったときに包茎状態となった。このあたりで映見への挿入は困難となっていた。
 「仕方がないわね」
 映見はどこからかペニスバンドを手に入れてきて、郷一郎に装着させて貫かせた。
 「あん、あん、いい、いい」
 呻きながら腰を振っていたけれど、ポーズに違いないと郷一郎は思っていた。
 「ポーズじゃないわよ。感じてるんだから」
 そう言いながらペニスバンドを片付けようとして郷一郎の方を見てにやっと笑った。
 「な、なによ」
 「あなたも練習しておいた方がいいかなって思って」
 「イヤよ、それに膣もまだないし」
 「膣がなくたって、後ろがあるでしょう?」
 郷一郎はいやいやと首を横に振った。
 「わたしの言うことが聞けないって言うの?」
 こんな時、映見は年下なのに、まるで年上、母親みたいな言い方をした。これまでの恩義を考えれば、郷一郎は従わざるを得ないのだ。
 「まずはフェラチオの練習ね」
 ペニスバンドを腰に着けた映見の前に跪き、ペニスバンドを握って舌を這わせ始めた。すごい変態になった気分だけど、女になってしまうんだから、これもやらざるを得ないと考えながら、ペニスバンドを咥えて舌を這わせた。
 「いい感じだけど、ときどきわたしの方を見上げるといいわ。そして、にっこりと微笑むの。あなたのチンポが好きだって伝えるわけね」
 映見が郷一郎にフェラチオするとき、そんなことをやっていたなと思った。確かにそうされると男としては嬉しくなるものだ。
 「そんな感じでいいわ。ちゃんと覚えておいてね。さあ次は、仰向けになって」
 仰向けになる映見はともはやクリトリス化している小さな郷一郎のペニスに舌を這わせ、小陰唇化している陰嚢を吸ったりした。
 「さあ、いよいよ処女喪失よ。両足を掲げて。膝の裏を両手で掴むといいわ」
 言われるとおりにすると、映見はペニスバンドにコールドクリームを塗りつけて、郷一郎のアヌスに宛がった。
 「口を開いて力を抜くのよ」
 こんなことを映見はやったことがあるんだろうかと訝りながら郷一郎は言われたとおりにした。
 アヌスに圧力を感じた。
 「い、痛い、痛い。無理、無理」
 郷一郎は逃げ出した。
 「やっぱりダメね。少し拡張しておきましょう」
 「力抜けだの拡張だの、どうして映見はそんなことを知ってるの?」
 「昔付き合っていた男にアナルをやられたことがあるのよ」
 30を越えた水商売の映見に男がいなかったとは考えていなかったけれど、映見の口から具体的にそう言われると、郷一郎は何だか悲しい気持ちになっていた。
 「さあ、元の姿勢に戻って」
 言われるまま膝を抱えて両足を掲げると、コールドクリームを塗った指が押し当てられた。くるくる回すようにして映見の指が郷一郎の中に入ってきた。
 「どう? 痛くない?」
 「どうってことないわ」
 「でしょうね。じゃあ、二本入れるわよ」
 少し痛いが我慢できる。
 「気持ちが悪いわ」
 「あなたには前立腺がまだあるのかしら?」
 直腸の中を探っている。
 「らしきものを触れないわね。でも、これはなんだろう?」
 ぐいと押される感触がした。
 「ねえ、これは子宮みたいよ」
 郷一郎はぎょっとして身体を起こした。
 「膣はできていないけど、子宮はできているみたいね」
 「と言うことは?」
 「もうすぐ膣ができて子宮と繋がるんでしょうね」
 「だったら、今日は止めにしましょう。膣ができてからに」
 郷一郎が起き上がろうとすると胸を押されて押し倒された。
 「ものは経験。一度やっておきましょうよ」
 まるで女を前にした男のような目で映見はニタッと笑った。従わざるを得ない。膝を抱えて仰向けになった。
 コールドクリームを塗ったペニスバンドが郷一郎のアヌスに宛がわれた。
 「優しくしてね」
 郷一郎がそう言うと、映見はうふふと笑い、30過ぎの小母さんの言葉じゃないわねと言った。
 膨れっ面をする前に貫かれた。
 「い、痛い!」
 「大丈夫、入ったから」
 走り出してしまいたいほどの痛みが郷一郎を襲う。けれど、我慢した。映見は小刻みに前後にペニスバンドを動かしながら少しずつ押し込んでいった。
 「どう?」
 「ひどい気分。もういいでしょう?」
 ダメ、ダメと答え、映見は抽送を始めた。
 「痛い、痛いからもう止めて」
 映見はやめるつもりはなく、抽送を続けた。
 「もう疲れたわ」
 映見が腰を引いてペニスバンドを引き抜いたのは、10分ほどたったときだった。郷一郎のアヌスは麻痺したようになっていた。
 「どうだった?」
 「ひどく惨めな気分だわ」
 「そう? そのうち楽しめるようになるわ」
 「できたら後ろじゃなくて、膣で楽しみたいわ」
 そうねと言い、映見は微笑んだ。
 「そう言えば、ペニスの、もうクリトリスって言った方がいいかな? 紐が後ろに向かってのびているみたいだよ」
 そんなことを言われたって郷一郎からは見えない。映見が携帯で写真を撮って郷一郎に見せた。
 「なんだろう? どうなるんだろう?」
 疑問は数日後に判明することになる。紐に見えたものの幅が少しずつ広がっていき、ピンク色の粘膜に変わっていったのだ。
 そしてある朝、小便をしようとして郷一郎は驚き、便器の中を見た。小便があらぬ場所から出ていたからだ。
 トイレットペーパーで拭いてから映見に伝えると、M字開脚させられて観察されたあと、携帯で写真を撮って郷一郎に見せた。
 「ほら、ここからおしっこが出たのよ」
 「そこが尿道口なのね。それにしてもまるで女の子だね」
 「そうね。このあたりに膣があったらね」
 映見が指し示す場所にはわずかなへこみがあった。
 「ここに膣ができて、子宮と繋がるのね」
 自分の身体に膣ができつつあると知り、子宮があると言われたときよりも奇妙な気分になっていた。

 それから3日後、臀が濡れた感じがしてショーツを降ろしてみると茶色の粘液がべっとりと付いていた。
 「膣と子宮が繋がって子宮の分泌物が出てきたんじゃないの?」
 茶色いから生理みたいなものかもと言うので、生理用品を当てた生理用ショーツを穿かされた。
 「こんなの気持ち悪いわ」
 「女は毎月その気持ち悪さと戦っているのよ。あなたもそうなるんだから、我慢しなきゃ」
 女に生理があることは郷一郎はもちろん知っているわけだけど、他人事だった生理が起こると言われて、戸惑っていた。
 翌日、生理用品にはどす黒いものが付いていた。
 「これは完全に生理ね」
 女の映見が断言するのだから、間違いないと郷一郎は思った。
 「じゃあ、ママ。女になったんだから、男の人と付き合うときは妊娠しないように気をつけてね」
 映見がにっこりと笑って郷一郎に言った。

 映見が郷一郎のことをママと呼ぶ理由、それは郷一郎と映見が母娘と言うことにしたからだ。
 郷一郎の胸が膨らんでAカップほどになったとき、映見は例のメールアドレスに空メールを打ち、出かけていった。
 そして、マンションに戻ってくるとすぐ、腹に注射をしたのだ。
 「映見、それはまさか若返りの薬じゃ?」
 「そうよ。それがどうしたの?」
 「34の映見が若返ったら、中学生くらいになってしまうぞ」
 「いいのよ。わたし、中学生になるから、一郎さん、わたしのママになって」
 ぎょっとした。
 「わたしね。中学を卒業したあと、施設から抜け出して、ひとりで生きてきたの。生きるために売春したわ。あなたに出会うまで、ほとんど毎日男に抱かれたと言っても過言じゃないわ。そんなわたしの人生をリセットしたいの。家出する以前のわたしに戻りたいの」
 涙を流しながら言う映見に、そうするしかないかと郷一郎は思った。
 「一郎さんはわたしの戸籍を使って。決して誇れる戸籍じゃないけど」
 「今のわたしには戸籍がないから助かると言えば助かるけど、映見はどうするの?」
 「わたし、19の年に出産したことがあるの」
 郷一郎はぎょっとして映見の顔を見た。毎晩のように男に抱かれていれば、妊娠・出産など当然のことであろう。
 「でも、産まれてすぐ死んじゃったの」
 ぼろぼろと涙を流す。
 「出生届は出していたんだけど、死亡届は出さずに海の見える丘に埋めたの。だから、わたしの娘はまだ生きていることになってるの」
 「映見はその娘の戸籍を使うんだな?」
 「娘として幸せになったら、少しでも供養になるかなって思って」
 ダメと言えるわけもなかった。



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