第9章 女になったらやりたいこと


 大竹は、ボクの顔を一瞥すると、中に入ってきて後ろ手に鍵を掛けた。
 「佐田! 風邪の具合はどうだ? 食い物持ってきてやったぞ」
 そう叫びながらリビングに行き、どっかと腰を下ろした。ボクは玄関に突っ立って大竹の様子を窺っていた。すると、大竹が顎でこっちに来いと促してきた。
 ボクは恐る恐るリビングに移動し、膝を突いた。
 「おまえ、いつからそんなことをやってたんだ? ぜんぜん気づかなかったぜ」
 ニタリと笑ってそう言った。大竹は、ボクの顔を見てすぐに気づいたようだ。大きな声で叫んだのは、ボクのアリバイを作ってくれたようだ。
 さすが大竹だなと思ったけれど、もしかするとボクが女になっていることを知った上での行動、つまり魔法を掛けたのは大竹ではないかと勘ぐった。
 「あのう、おっしゃってる意味がわかりませんけど?」
 「誤魔化そうったって駄目だぜ。俺の目は節穴じゃねえ。しっかし、よく化けたな。声まで女だ。参ったな」
 (声まで女? 魔法を掛けたのが大竹だったら、そんな言い方はおかしいな)
 「もしかして、正美さんが女装しているって思ってられるんですか?」
 えっと大竹は眉を顰めた。
 「わたし、正美さんのお友達で、早苗って言います」
 「えええ? 嘘だろう? おまえは佐田だよ」
 「姉妹みたいに似てるってよく言われますけど、わたし、正美さんじゃないですよ」
 「じゃあ、佐田はどこにいるんだよ?」
 「ゲームを買ってくるとか言って出掛けてます」
 「風邪引いて会社を休んだって言うのにか? 女装するために会社を休んだんだろう? 違うか?」
 「女装するためだったら、土日でもいいんじゃないですか?」
 「それもそうだが・・・。あ、そう。その長い髪の毛、ウイッグが届いた。あるいは、胸。シリコンの人工乳房が届いて、土曜日まで待てなかった。だから、風邪と偽って、年休を取った。図星だろう?」
 「わからない人ね。これのどこがウイッグなの?」
 髪の毛の端を持って引っ張らせた。
 「胸だって、どこがシリコンなの?」
 Tシャツの胸元を引き下げて谷間を見せた。それでも大竹はボクが女装していると考えているようだ。
 「もう! 仕方がないわね。ほら」
 ボクはスカートの裾を引き上げた。
 「おわっ! ない!」
 驚いたけれど、イヤイヤと頭を振った。
 「タマも棹も隠す方法があるって聞いたことがある」
 「どうすればわたしが正美さんじゃないって信じてもらえるの? あなたとセックスしろとでも言うの!」
 怒ったように言うと、本当に女なのかと尋ねた。
 「何度も言ってるわ。わたしは女です」
 「参ったな。ホントよく似てるよ。佐田に。絶対に佐田が女装していると思ったぜ」
 話の流れから、大竹が魔法のようなものを掛けたのではなさそうだと判断した。これで、大竹はボクに魔法を掛けているとしたら、大竹は相当な強か者と言うことになるけれど、これまでの付き合いからしてそう言うことはない。
 「夕ご飯、食べていくでしょう?」
 「あ、いいのか?」
 「ひとりもふたりも同じだから」
 そう言ってからミスったと思ったけれど、大竹は気づいていないようだ。この場面では、ふたり作るも三人作るもと言わなければならないのだ。
 もっとも豚汁は3人分ほどある。鯖の味噌煮を増やすだけでいいのだ。
 「佐田の奴、なかなか帰ってこないな」
 「放っておけばいいわ。そのうち帰ってくるから。テレビでも見ていて」
 そう言って、テレビをつけてやった。
 「できたわよ。どうぞ、食べて」
 「あ、ああ。佐田は? もう1時間もたってるぞ」
 「いいから、食べて」
 「もしかして」
 大竹はボクの顔をもう一度見た。
 「大竹さん、あなたの想像は半分は当たっているけど、半分は違ってるわ」
 「どう言う意味だ?」
 「あなたの直感通り、わたしは佐田正美よ」
 「やっぱりか。おかしいと思ったんだ。で? 半分は違ってるって言う意味は?」
 「言ったでしょう? わたし、女なのよ」
 「は、はあ?」
 狐につままれたような顔をした。
 「正確に言うと、女になってしまったの」
 「何だって!」
 大竹は持っていた箸を取り落とした。
 「今朝目が覚めたら、女になっていたの」
 「馬鹿な」
 「信じてくれなくてもいいわ。でも、事実なの」
 あり得ないと大竹は、馬鹿にしたように言った。
 「じゃあ、さあ。ご飯を食べ終わったら、セックスしましょう。そうしたらわかるわ」
 「せ、セックス!」
 「女になったらしたいこと、女子更衣室に入る。女風呂に入る。オナニーする。男とセックスする。前に話したこと、なかったっけ?」
 「そんなことがあったけど・・・」
 大竹は狼狽えながら答えた。
 「早く食べて」
 「ちょ、ちょっと待ってくれ。何が何だかわからなくなってきた。さっきまでは、佐田が女装していると思っていた」
 「今は?」
 「今は、佐田によく似た女が佐田の振りをしているとしか思えないんだ」
 「だ・か・ら、言ったでしょう? 今朝目が覚めたら女になっていたって」
 「そんなの、信じられるかよ!」
 大竹は怒り出した。まあ、それが正常な反応だろう。
 「今朝、風邪で年休を取ってくれって電話をしたあと、わたしのお母さんに連絡してくれたでしょう?」
 「あ、ああ」
 「10時頃お母さんがここに来たの。女になったって言ったら信じてもらえなかったけど、お母さんだけが知ってる秘密を話したら信じてくれたわ。わたしが正美だって」
 「あり得ない・・・」
 「わたしが女だってことを確かめるより先に、わたしが佐田正美だってことを証明する必要があるみたいね?」
 「どうやって証明するんだよ!」
 「何にしようかな? 大学に入ってすぐ、歓迎コンパの帰りにソープに寄ったときの話にしようかしら?」
 「ちょ、ちょっと待てよ」
 「相手は、まゆみって言う名前で、下腹に妊娠線があるのを見たら勃たなくなって、そのまま出てきたのよね」
 「佐田の奴、そんなことをおまえに話したのか?」
 「童貞を捧げたのは、クラブの先輩で北林留美子。デカパイだったけど、あそこが臭かったって言ってたわね」
 大竹の表情が変わってきた。
 「これはわたしとあなたの最大の秘密。絶対に他人には話せないこと。言ってもいいかしら?」
 大竹はゴクリとツバを飲んだ。
 「大学3年の時、新入生だった沢口晶って子に酒を飲ませてふたりで強姦した。順番を決めるのに、ジャンケンして勝ったのはわたし。彼女、処女だったから、ジャンケンに負けたこと、すっごく悔しがっていたわね?」
 「ホントに佐田なんだな?」
 「言ってるでしょう? 女になっているけど」
 「どうしてそんなことになったんだ?」
 「ついさっきまで、あなたが魔法を掛けてわたしを女にしたって思ってた」
 「まさか。そんなことをするかよ」
 「ホントかなあ?」
 「そりゃ、おまえ、女にしたら結構美人になるなとは思っていたけど、そんな魔法なんてものがあるはずがないからな」
 パラレルワールドでは存在したけれど。
 「だったら、どうして女になってしまったんだろう?」
 「ぜんぜん心当たりがないのか?」
 「あなた以外にはあり得ないと思っていたから」
 「信用、ないんだな」
 「あるとでも思ってたの?」
 大竹は苦笑いをして、確かにおまえは佐田だと言った。
 「すぐに片付けるから、待っててね」
 汚れ物を片付けながら、ふと気がついた。
 「コンドーム、持ってる?」
 「コンドーム? 持ってないぞ」
 「買ってきてよ。できたら困るでしょう?」
 「魔法で女になって妊娠するのか?」
 「当たり前でしょう? 早く買ってきてよ」
 わかったと返事をして大竹は部屋を出て行った。

 10分後戻ってきた大竹は、1ダース入りのコンドームをふたつ持っていた。
 「そんなにできるの?」
 「1個買うより2個買った方がお買い得だったんだよ」
 「だったら、1グロス買ってきたら?」
 いくら何でもなあと言いながら、スーツの上着を脱いでボクと一緒にベッドルームに入った。
 「佐田、女になると可愛くなるだろうと思っていたけど、予想以上だな?」
 「ありがと。佐田じゃなくて、正美って呼んでよ」
 大竹は頷き、ボクの腰を抱いて唇を重ねてきた。
 (うふっ! 遊んでるだけあって、上手いな)
 本番も期待できそうだと思った。
 (あれ? フェラチオさせようって言うの?)
 ズボンのチャックを降ろしてペニスを露出させたのだ。しかもボクの後ろ頭を押さえてペニスの方に誘導していった。
 (そんなことをしなくてもしてあげるよ)
 ボクは大竹のペニスをパクリと咥えると、舌を使いながら大竹の穿いていたズボンのベルトを緩めて脱がせ、さらにトランクスも降ろしてやった。
 大竹の方はボクの着ていたブラウスを脱がせていく。それが終わると、ネクタイを外してワイシャツを脱いでいった。
 ボクは大竹のペニスを咥えたまま後ろ手にスカートのホックを外してファスナーを降ろしていった。
 「正美、もういいぞ」
 全裸になった大竹がボクを抱え上げ、ベッドの上に放り投げて覆い被さってきた。キスしながらボクの身体を愛撫し、愛撫しながらブラジャーを外しショーツを降ろしていった。
 大竹はボクの乳首を舐めながら、クリトリスを弄ぶ。
 「あ、うん。ああ、はあ・・」
 フフフと含み笑いをしながら大竹はボクへの愛撫を続けた。
 「あっ!」
 クリトリスを舐められた。吸われた。気持ちがいい。フェラチオされるよりもずっといい。これは女になってみなければわからないことだ。
 クンニしながら、大竹はボクの女の中に指を入れてきた。出し入れしながら、何かを探っているようだ。
 (あ、Gスポットか)
 思ったとたん、グワッとした快感がボクを襲った。そここそがGスポットだろう。大竹は宝物を探り当てたと言わんばかりにその辺りを擦り続けた。意識がフワフワと舞い始めていた。
 指の存在が消え、大竹がボクの上に乗ってきた。堅く熱いものがボクの太股に当たっていた。
 膝を立てると、大竹はボクの両足を肩の上に載せた。そうして屹立した大竹のペニスがボクの腟口に宛がわれた。
 (少し上過ぎるよ)
 そう思っていたら、ヒダとヒダの間を擦るようにして下がってきてボクの中に食い込んだ。
 (い、痛い!!)
 今のボクは、パラレルワールドの中のボクとは違うようだ。違っていなかったら、こんなに痛くはないはずだ。
 「痛いのか?」
 「ううん。平気よ」
 平気じゃないけど、そう答えた。このまま続けて欲しいからだ。ゆっくりとボクの中に入ってくる。ゆっくりと引き抜き、再びゆっくりと入ってきた。
 大竹の顔を見ると、どうやらボクの顔を伺いながら腰を動かしているようだ。と、大竹が唇を重ねてきた。差し入れられてきた舌を吸った。
 「リ、リキ。辛い。足を」
 「お、おう。そうか」
 大竹はボクの足を肩から外した。この方が楽だ。ボクの顔を見ながら、大竹はリズミカルに腰を動かす。
 クチュクチュクチュと卑猥な音が部屋の中に響き始めた。まだ痛いけれど、心地良さも沸いてきていた。
 腰を動かしながら大竹はボクキスしたり、身体をボクに預けて胸を揉んだりした。体位を変えるつもりはないようだ。
 大竹はもう10分以上腰を動かしている。ボクは寝ているだけでいいけど、男はやっぱり大変だなとふとそんなことを思った。
 スピードが上がってきた。その時が近いと感じた。
 「ううう、正美! 行くぜ!!」
 ボクの中で膨らむのがわかる。そして大竹の動きが止まると同時にボクの中でグイグイと跳ねているのがわかった。
 「あっ、あっ、ああん・・・」
 ボクも行っていた。

 荒い息を吐きながら大竹がボクの上に倒れ込んできた。重いけどその重さが心地いい。
 「ふうう。よかったぜ」
 大竹が抜け出ていく。
 「あれ? 血だ。血が付いてるぞ」
 「初めてだもの」
 「初めてって、処女ってことか?」
 少し驚いた表情を見せた。
 「当たり前でしょう? 昨日までは男だったんだもの」
 視線を少し泳がせてから大竹はボクに言った。
 「おまえ、やっぱり佐田か?」
 「なんだ。まだ信じていなかったの?」
 「ありえないと思っていたからな。けど、俺を騙すだけのために処女を宛がうとは思えないものな」
 「もう信じてくれた?」
 「ああ。しかし、俺でよかったのか? 最初の相手は」
 「あの時話したでしょう? もしも女になったときには、処女を捧げ合おうって」
 「そうだったけどなあ・・・」
 「リキは、わたしの一番の親友なんだもの。処女を捧げる相手として一番よ」
 そう言うと、大竹は嬉しそうな表情を見せボクにキスした。
 「ところで正美? 行ったみたいだけど」
 ボクは頷いた。
 「初めてなのに行けたのか?」
 「リキのテクニックがよかったせいよ」
 そう答えると大竹はにやけた。もちろんそれもあるけれど、パラレルワールドでの市丸とのセックスで何度も行かされていたから、行き方がわかっていたせいでもある。
 「正美、もう一回いいか?」
 「もうできるの?」
 「わかってるだろう?」
 「うふっ! いいわよ」
 再びディープキスして、二度目を始めた。今度は正常位だけではなく、バックも騎乗位も使った。
 (ああ、気持ちいい。セックスって、最高!)

 結局大竹はボクのアパートに泊まった。そして起き抜けにもう1回セックスした。
 「正美、おまえ、最高だ」
 「リキもよ」
 「ところで、考えたんだけどな。正美が女になってしまったのは、あいつのせいじゃないか?」
 「あいつって?」
 「昨日話しただろう? 俺たちが強姦した沢口晶だよ。恨みを買うとしたら、あいつしかいないと思うんだ。他の女はみんな合意の上だからな」
 「そうか。もしかしたら、そうなのかも。でも、あれは5年間前の話なのよ」
 「女は執念深いからな」
 「それはそうかもしれないわね」
 ボクとしては少し疑問が残る。
 「正美はその姿じゃ動けないだろうから、俺が調べてみるよ」
 「頼むわ」
 朝食を食べさせると、大竹は待ってろよと言い残してアパートを去っていった。
 (今日は仕事だから、結果が出るのは早くても日曜日だろうな。・・・沢口晶のせいだとして、元に戻れるだろうか?)
 元に戻れないと感じるのは、欲情に任せて処女を失ったからだ。処女のままでなければ元には戻れない。そんな気がするのだ。



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