第7章 女へ、そして結婚


 翌日からは、ボクの助けを借りなくても挿入することができた。ただ、キスもしてくれず、フェラチオもさせてくれなかった。
 (まだ男の身体だし、仕方がないか)
 身体に変化が出てきたら、市丸の気持ちも変わるだろうと期待していた。

 月曜日の朝、バスに乗っていて急に乳首が痛くなった。パッドを固定したいとが触っているのかもしれないと思っていた。
 帰宅してブラジャーを調べてみたけれど、糸のせいではないようだった。
 (あ、やっぱり痛い)
 乳首を触ると痛むのだ。
 (シコリができてる)
 乳首の下に硬いものが触れた。
 (まさか、癌じゃあ?)
 ボクが夕食を作るのを待っていた市丸にそのことを訴えてみた。
 「ああ、それなら聞いてるよ。乳腺が大きくなる前兆だって言ってた」
 「じゃあ、心配ないのね?」
 「薬が効いてる証拠だよ」
 その言葉を聞いてホッとした。

 そのシコリは徐々に大きくなり、少し柔らかくなっていった。そして、薬を飲み始めて1週間目には、ボクの胸は少女のように膨らんでいた。
 (ウエストも少し細くなったみたいだし、腰も張ってきたようだな)
 メジャーで測ってみると、ウエストは確かに細くなっていた。けれど、ヒップの方は変わっていなかった。ただ、ヒップの位置が少し高くなっていた。
 写していた写真を比較してみた。写真は市丸が撮ったのではなく、ボクが撮ったものだ。市丸は男の裸を見たくなかったらしく、デジカメをボクに渡してボクに撮るように命じたのだ。写真を撮ることが薬を使う条件だったから、仕方なく裸になって全身と局所の写真を撮っておいたのだ。
 薬を飲む直前と今では、確かに変わっていた。
 (肩幅も少し狭くなったような・・・)
 薬が効果を発揮してきていることは疑いがなかった。
 (ペニスも縮んできているみたいだし・・・)
 露出していた亀頭が包皮に半分ほど覆われるようになっていた。さらに睾丸も心なしが小さくなったように感じていた。

 2週間がたった。今日は市丸がキスしてくれた。そうして、急速に膨らんでBカップに育った胸を弄んでいる。
 「この性転換薬はホントに凄いな」
 「まだまだ大きくなりそうよ」
 市丸は嬉しそうな顔を見せた。
 「ペニスも随分小さくなったな?」
 ペニスと睾丸を掴むようにしながら囁いた。ペニスは親指大に縮み、睾丸も半分以下になっていた。
 この頃には、剃ったむだ毛が生えなくなって肌がすべすべになり、陰毛の分布を変わっていた。
 今日は、市丸とアナルファックをするようになって初めて正常位で市丸を受け入れていた。要求したわけではなく、自然にそんな形になったのだ。それは男性器が縮んだお陰だ。
 セックスするとき、お互いの顔が見えると言うことは素晴らしいことだ。だから、バックよりも正常位の方が断然いいと思う。
 そして、市丸が弾けたとき、身体の芯に湧き上がってくる快感にボクの意識は宙に舞っていた。
 1週間目あたりから、突かれているとふわふわして気持ちがよくなっていたのだけれど、ついにボクは行ったのだった。

 3週間目、ボクの胸はCカップになった。ウエストも60を切った。身体が随分柔らかくなったことを自覚できる。女の身体になったのだ。
 そして、ボクのペニスは、もはやペニスと呼べるようなものではなくなっていた。亀頭は人差し指大となり、ペニスシャフトはすでになくなっていた。
 (ペニスと言うよりもクリトリスと呼んだ方がいいな)
 それを市丸はペロペロと舐め、吸ったりする。快感で蕩けそうだ。
 「睾丸がなくなったんじゃないか?」
 「よく触ったら、まだあるみたいだけど?」
 タマ袋も縮み、その中に少し硬いものがある程度になっていた。さらに、ヒモの部分が肛門に向かって延び、その一番下から小便が出るようになっていた。
 ペニスが縮んだために2週間目くらいから立ち小便ができなくなっていたのだけれど、小便がそんな場所から出始めたのはつい3日ほど前だ。
 もちろん座ってしか小便ができなくなっていたわけだけど、かなり驚いたのは事実だ。

 25日目の朝、表現できない違和感を覚え、鏡で股間を覗いてみると、何と膣ができていた。ヒモから伸びていた硬い索状物が開いてピンク色の粘膜が見え、一見すると女性器になっていた。
 「正美、ほとんど女に戻ったぞ」
 ボクの女性器を舐め回しながら、市丸は嬉しそうに言った。
 「もう挿入できるかしら?」
 「できるかもしれないけど、まだ駄目だ」
 「どうして?」
 「今の段階で膣に挿入すると、転換過程が止まってしまうらしい。今の正美はほとんど女に近いけど、もう少しだと思う。ともかく、30カプセルを飲みきるまでは膣は使わない方がいいだろうな」
 「そうなの・・・」
 汚いところを使わせているから、膣ができたのならそちらを使って貰おうと思っていた目論見が消えた。
 (でも、あと5日だものな)
 膣を使ったセックスは違うんだろうなと期待しながら待った。

 30カプセル目を飲み、30回目のアナルファックが終わった。
 「明日からは普通に男と女としてセックスできるのね?」
 「イヤ、まだなんだ」
 「はあ? どうして?」
 「マニュアルによると・・・」
 市丸は小冊子を取りだして、最後の章をボクに見せた。
 「生理が始まったのを確かめてから最初のセックスをすること?」
 「そう書いてある」
 「生理が始まる前にセックスするとどうなるの?」
 その点については記載がないのだ。
 「博士に尋ねてみよう」
 市丸は携帯電話を掛けた。
 「生理を経験したあとでないと、子どもができないかもしれない? どうしてですか? わからない。わからないけれど、これまでの人たちの経験から、そう言う結果になっている。わかりました」
 携帯を切って、市丸は聞いたとおりだと言った。
 「じゃあ、仕方がないわね」
 市丸はまた明日と言い残して部屋を出て行った。
 (また明日? 膣は使えないのに? あ、そうか。アナルはやれるんだ)
 くすっと笑った。
 (さあ、写真を撮っておこう)
 最後となる写真を撮った。全裸になって正面と側面の写真を撮る。それが終わると、三脚を固定し直して、M字開脚で股間を撮るのだ。
 撮り終わってから、モニターに映し出してみた。どう見ても女の身体に変わっている。性器も完全に女性のものだ。
 この姿で元の世界に戻ったらどうしようとちらりと思った。

 翌日曜日、午前10時頃市丸がやってきた。朝からベッドかなと思って喜んでいると、デジカメをボクから受け取り、メディアを博士に届けに行くと言った。
 「あとで来るんでしょう?」
 「あ、いや。しばらく来ない」
 「えっ!? どうして?」
 「ホントはね」
 アナルをしたいと思っていたけれど、博士に止められたというのだ。
 「何故なの?」
 「もし腟の中に精液が入ったら、生理が始まる前にセックスしたのと同じ結果になるそうなんだよ」
 「つまり子どもができなくなるの?」
 「そうらしい。だから、しばらく禁欲だよ」
 ボクははあとため息を吐いた。男とセックスすることになれてしまったこの頃のボクは、毎日でもしたくて堪らなくなっていたのだ。
 フェラチオさせてと言う前に市丸はアパートを飛び出て行ってしまった。取り残されたボクは、ベッドルームに入ってひとりエッチをした。
 男のマスターベーションとは違うけれど、これも結構いいのだ。ただ、ひとりエッチではまだ行ったことはない。

 月曜日、ロッカールームで着替えていると奥野が後ろから覗き込んできた。
 「すごくセクシーな下着ね?」
 「そう?」
 ボクが身につけているブラジャーは、2分の1カップで、谷間を強調するような構造になっているものだ。
 「前はフルカップのものばかりだったのに、彼氏の趣味?」
 フルカップでなければ胸がないことを知られるからだった。今はむしろ、谷間があることを見せつけたいからだ。
 「まあね」
 「少し大きくなってない?」
 谷間あたりをツンツンと突いて言った。
 「彼に揉んで貰ってるから」
 「きゃはは。よく言うわ」
 「美智子も彼氏に揉んで貰いなさいよ」
 「彼氏がいないこと、知ってるくせに!」
 笑い転げていると、お局様がやってきてボクたちは大急ぎで着替えを終えて仕事に向かった。

 仕事帰り、コンビニで生理用品を買った。多い日用とかいろいろ種類があって、どれを買ったらいいのか迷ってしまった。

 女として会社勤めをする日常が続いた。市丸はやってこない。
 (セックス抜きでデートしてくれればいいのに)
 それが少し不満だ。

 性転換薬を飲み終わってちょうど2週間目、トイレに行ったときショーツにわずかに出血があるのに気がついた。
 (これはきっと生理が始まったんだ)
 生理用品を付けた生理用ショーツに履き替えて出勤した。午後になってはっきり出血があった。
 市丸に生理が始まったことをメールすると、すぐに「やったね! 初潮おめでとう」と返事が戻ってきた。
 (初潮だなんて、馬鹿だね)
 そう思ったけれど、ボクにとって初めての生理だ。初潮と言ってもおかしくはないなと思い直した。
 女にはどうして生理なんてものがあるのだろうかと思う。汚らしくて、めんどくさい上に、気怠くて、めちゃ腰が重い。
 (女になんか、ならなきゃよかった)
 本気でそう思った。けれど、退社時刻近くになって、市丸から生理が始まったお祝いをしようとのメールが入り、そんな思いは吹き飛んでいた。

 市内にある一番のホテルにある高級レストランに席が取ってあった。
 「こんな服なのに」
 キャミソールにジーンズだったのだ。すると市丸は、そのホテルの中にあるこれまた高級ブティックにボクを連れて行き、ドレスを買ってくれた。今度は外に着て出られないようなものだった。
 でも、ホテル内だからいいかと、そのドレスを着てレストランに行った。

 シャンパンで乾杯するとき、市丸はまたもや初潮おめでとうなどと言った。
 「馬鹿!」
 「事実だろう?」
 「まあね」
 「はい、これ」
 足下に置いてあった袋の中から小箱を取り出してボク渡した。指輪にしては大きな箱だし、木でできた箱だ。開いてみると、赤飯が入っていた。
 睨み付けると、今度はスーツの内ポケットから羅紗で覆われた小さな箱を取り出してボクに渡した。
 「結婚してくれるね?」
 小箱を開くと、ダイヤの指輪が入っていた。もちろんボクは頷いた。

 翌土曜日午前11時、市丸は仲人を伴ってボクの実家にやってきた。ボクは朝早くから起きだしていて、振り袖を着付けて貰って待っていた。
 女に戻ったことを知らせていなかった母には、前日ホテルから戻って伝えてあった。当然のことながら、朝目覚めたら女に戻っていたと説明しておいた。
 結納は滞りなく終わり、ボクは退職して花嫁修業へ突入した。何しろ女としての修行はほとんどしていないからだ。特に料理について、母に厳しく教え込まれた。

 3ヶ月後、ボクはウエディングドレスを着てひな壇に上っていた。
 「新郎はやっぱり市丸さんだったの?」
 奥野が戸惑い気味に言った。式の案内状には、市丸の本名である橋田秀樹が新郎として書かれていたから、市丸と別れて別の男と結婚すると噂されていたのだ。
 「しかも社長の息子さんだったなんて!」
 市丸が社長の息子であることは、重役の一部しか知らなかった。だから、招待客は会場に来て初めてそのことを知ったのだった。
 玉の輿だと言われることには抵抗があるけれど、綺麗だと言われることは結構嬉しかった。

 式が終わり、二次会も終えて、結婚式の会場となったホテルで初夜を迎えた。これが女になって初めての交合かと言えば、もちろん違う。結納の後、生理が終わったとたん、市丸からホテルに誘われたのだ。
 「式まで待てないの?」
 「結納が終われば、結婚したも同然なんだぜ」
 それはそうかもしれないし、以前ふたりはセックスしていたわけだから、断る言葉がなかった。
 指輪を渡されたホテルでディナーを取ったあと、スイートに上がった。
 「正美、綺麗だ」
 抱きしめられ、キスされた。身体がジンと痺れた。ベッドに運ばれ、愛撫されながら着ていた服を脱がされていく。
 「すっかり元の身体になったな?」
 全裸になったボクの胸からウエスト、下腹部に指を滑らせながら言った。うんと答えたけれど、ボクの元の身体は男だ。すっかり変わってしまったという方が正しい。
 「ここも可愛い」
 クンニしながら言う。可愛くなったものだ。ペニスだったものが、今や小指大ほどもない。
 「あん・・・」
 小指大でも快感は倍以上だ。
 「お返しするね?」
 ボクは市丸のペニスをパクリと咥えた。ボクはフェラチオが大好きになっていた。ボクは男ではなくもはや女なんだから。
 フェラチオを終え、ボクは仰向けになって膝を立てた。市丸が間に入ってくる。ペニスが恐ろしいほど硬く反り返っている。
 ボクの顔を見ながら、腟口に宛がい、そして腰を沈めた。
 (い、痛い!)
 股が切り裂かれたような激痛が走った。けれどボクは顔を顰めることなく、両足を市丸の身体に巻き付けた。
 「久しぶりに正美とひとつになれたね」
 ここはええと答えるしかない。市丸が腰を動かすたびに痛みがボクを襲う。
 「あ、ああ。ああ」
 痛いと叫びたかったけれど、その言葉だけは出さなかった。ものすごく長い時間がたったような気がした。けれど、市丸がボクの中で果てたとき、挿入されてから数分しかたっていなかった。
 市丸がゆっくりと抜け出ていった。入ってくるときよりも、抜けていくときの方がずっと違和感を覚えた。そして、女になったことをはっきりと自覚した。
 「あれ? 血が出ている」
 「初めてなのよ。血が出て当然よ」
 「あ、そうか。女になって初めてだったんだな。そうか。すると、俺は正美の処女を3回いただいたことになるんだな?」
 少なくともボクの処女を2回与えたことにはなるのだ。前と後ろの処女を。

 その日から、ほとんど毎日、式前は1日おきくらいに市丸と身体を重ねた。もちろん市丸は大人だから、コンドームは欠かさなかった。
 けれど、初夜の今日はコンドームを着けないでボクの中で射精した。計算上、今日か明日が排卵日だ。子どもも産める女になっているとすれば、10ヶ月目にはボクは子どもを産むことになるだろう。

 ハネムーンベビーができていた。ボクの腹は次第に大きく膨らんでいき、予定日から3日遅れで女の子を産み落とした。
 沐浴をすませた赤ん坊がボクのすぐ横に連れてこられ、市丸がボクの頬にキスしてお疲れさん、ありがとうと言った。
 ボクは幸せだ。パラレルワールドに放り込まれたとき絶望したけれど、こっちに来てよかったと感じた。
 「あなた、愛してるわ」
 ボクは市丸にキスを返した。



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