第6章 性転換薬を使って


 市丸は、性転換手術を施してくれる医者を捜す一方で、魔法でも何でもいいからボクを女に戻す方法も探していたと言う。
 「性転換薬というのがいくつかあったけれど、ほとんどまがい物だったんだよ」
 「全部じゃないの?」
 「イヤ、これは本物だよ。実際に女になった人を見たんだ」
 「眉唾だわ」
 「誰も信じないだろうな。でね。彼が彼女になった経過を写真に撮ってあるんだよそれを借りてきた。今、見せるよ」
 市丸は、持っていた鞄の中からノートパソコンを取りだして起動し、USBメモリーを差し込んだ。
 画面に右半分が男、左半分が女のアニメの絵が描かれたアイコンが並んだ。
 「どれでもいいんだけど、ラッキーセブンでこれを開いてみよう」
 左上から数えて7番目のアイコンをクリックすると、全裸の男の正面と真横の写真が画面に表示された。首から上は映っていない。
 真ん中下にある右向きの矢印をクリックしていくと、男の髪が伸び始め、肩幅が狭くウエストは細くなり、ヒップが張り出してきた。
 それと同時に胸が大きくなっていき、ペニスが縮み、睾丸も小さくなっていった。やがてペニスも睾丸も分布の狭くなった陰毛の中に消えてしまった。
 「嘘でしょう? 合成写真じゃないの?」
 「初めは俺もそう思ったよ」
 そう言いながら、市丸は画面の片隅にある小さな画像をクリックした。するとM字開脚した女性の陰部が映し出された。
 「これは最後だからね。戻していくと」
 左向きの矢印をクリックすると、左右の小陰唇が癒合して膣が見えなくなり、クリトリスが肥大していき亀頭になった。癒合した小陰唇の中に丸い塊ができ、亀頭が伸びてきてペニスになってしまった。
 「これが最初なんだ。これがこうなっていくわけだ」
 市丸は再び右向きの矢印をクリックした。男性器が女性器に変化していった。
 「これだって、合成じゃないって証拠にはならないわ」
 「前の全身写真でもそうなんだけど、一枚一枚の写真が微妙に違うんだよ。ほら、両手や両足の開き具合とか、皺の寄り方とか。それに影の入り方とか」
 言われてみればその通りだ。
 「これが合成だとすると、相当手が込んでるな」
 この世界で目覚めたときと同じだと感じた。もはや信じるしかないと思った。
 「薬は手に入ったの?」
 「手に入ったよ。ほら、この通り」
 鞄の中からカプセルが詰まった小瓶を取りだしてボクに見せた。
 「このカプセルを飲めばいいのね?」
 「1日1カプセル飲むように指示されている」
 「全部で何錠入っているの?」
 「30カプセル」
 「1ヶ月で女になる訳ね?」
 「そう言うことだよ」
 ボクはごくりとつばを飲んだ。ボクは考える。男であるボクをボクが女として存在している世界に放り込んだ張本人はすでにこの世にはおらず、元の世界に戻る方法はない。ここに男から女になることができる性転換薬がある。女になったボクを愛してくれる市丸がいる。将来会社の社長になる市丸が。乗らない方がおかしいだろう。
 「副作用とかはないでしょうね?」
 「ないって聞いてる」
 「じゃあ、安心だわ。いつから飲む?」
 「もちろん今日からだよ」
 「わかったわ。ちょうだい」
 手を出すと、市丸は小瓶を手にしたまま、躊躇っている。
 「どうしたの? 早くちょうだいよ」
 「これを飲むだけじゃ駄目なんだ」
 「えっ!? どう言うこと?」
 市丸は言い淀み、躊躇った挙げ句にボクに告げた。
 「精子が必要なんだ」
 「はあ? どう言うことなの?」
 「・・精子を正美の身体に注入する必要があるんだ」
 「え、ええ!?」
 「その条件の聞いたとき、精子を飲んで貰えばいいんだろうと思ったんだ。けど、違った。飲んだら、胃で消化されるから駄目だって言うんだ」
 「つまり・・・」
 「正美の想像通りだよ。精子を注入する場所は・・・直腸なんだ」
 ガーンだ。女になるためにホモ行為をしなければならないなんて!
 「精子を注射器みたいなものに入れて注入しちゃ駄目なの?」
 「あ、ああ。なるほど。それには気づかなかったよ。それでもいいか尋ねてみるよ」
 市丸は、携帯を取りだしてどこかに掛けた。
 「もしもし、市丸ですけど、例の性転換薬の件ですが。はい。ひとつ聞きたいことがありまして。精子を直腸に注入する場合、例えばマスを掻いて出しておいて、注射器に入れて注入しちゃ駄目なんですか? えっ! はあ、そうですか。わかりました。え? 写真ですか? どうしても撮らないと駄目ですか? わかりました」
 「どうだった?」
 「精子を注射器に入れて注入しても女になれるそうだ」
 ボクはホッと胸をなで下ろした。いくら何でも男とセックスなんてしたくない。
 「けどね。その方法だと不感症になってしまうらしいんだ」
 「不感症に?」
 「そう。セックスしてもまったく感じないそうだ。それに」
 「それに?」
 「もっと大きなことは、子どもができないそうだ」
 「感じない上に子どもができない・・・」
 「そう。無理強いはしないよ。後ろでセックスなんてしたくないだろうから」
 「わたしは不感症でもいいけど、子どもができなくてもいいの?」
 「できなくてもいいって強がりを言ったけど、もしできるものなら・・・」
 女になるのならば、子どもを産める身体になりたいと思うのが人情だろう。ボクはアナルセックスに応じることにした。
 すると、市丸は鞄の中から浣腸液を取りだした。
 「わたしが応じると思っていたのね?」
 市丸は答えずに浣腸液をボクに手渡した。
 「薬はセックスの直前でいいらしい」
 わかったと返事をして、トイレに入って浣腸した。何かの拍子に黒魔術が解けて元の世界に戻らないかなと願っていたけれど、願いは叶わなかった。

 二回浣腸してトイレを出ると、市丸がネグリジェをボクに差し出した。フリルがすごく可愛い。
 (こんなもの、彼女に着せるもので着るようなものじゃなかったのにな)
 そう思いながら、そのネグリジェに着替えた。
 (あ、そう言えば、写真はどうなったんだろう? さっきの電話では、絶対に撮らないと駄目みたいなことを言っていたのに。きっと忘れてるんだな)
 顔が出ていないとは言え、撮すときには市丸の目に全裸の身体を曝さなければならないのだ。内心ホッとしていた。
 「さあ、ベッドに行って」
 「薬は?」
 「今日はまだいいんだ」
 「えっ! どうして?」
 「正美、アナルなんてやったことがないだろう?」
 「え? もちろんよ」
 向こうの世界でもない。
 「薬を提供して貰った博士に事情を話したとき、最初からアナルは無理だって言われたんだよ。少し拡張しておかないとってね」
 なるほどと納得した。
 「ベッドの上で四つん這いになって」
 四つん這いになると、市丸はネグリジェの裾を捲ってショーツを少し降ろし、ボクのお尻だけを露出させた。それ以上降ろすと、女にはあってはならないものが見えるからだろう。
 市丸はやはり鞄の中から取りだしてきたチューブからジェリーを指に取った。そしてそれをボクの肛門に塗りつけた。
 「気持ち悪くないか?」
 「大丈夫よ」
 気持ち悪くはないけれど、くすぐったかった。
 「指を入れるよ。痛かったら言ってくれ」
 指が入ってきた。今度は気持ち悪かったけれど、痛くはなかった。
 「大丈夫だね?」
 心配げな表情をしてボクに尋ねた。
 「大丈夫だって」
 「そうか。じゃあ、二本入れてみるからね」
 肛門に指が当たった。指が二本になっていることがはっきりとわかった。市丸はゆっくりと回すようにしながら挿入してきた。
 (い、痛い!)
 思わず腰を引いたのがわかったようで、すぐに引き抜かれた。
 「痛いのか?」
 「少しだけよ。やって」
 「あ、わかった」
 再び挿入された。痛むけれど、必至に我慢した。ゆっくり、ゆっくりと市丸の指がボクの中に入ってきて、ついに根本まで入った。
 「大丈夫だね?」
 そんな問いに頷くと、ボクの中で指を回し始めた。治まっていた痛みが再びボクに襲いかかってきた。右に回したり、左に回したり。痛くて堪らないけれど、声が出ないようにして耐えた。
 どれくらいたっただろうか? 市丸の指がボクの中から抜け出ていった。
 (次は三本入れるんだろうな。かなり痛いだろうな)
 そう思っていると、市丸はベッドから降りた。
 「どうするの?」
 「今日はこれまでにしよう」
 「えっ!?」
 「ゆっくり拡張した方がいいって言われてるんだ。その方が痛みが少ないって」
 なるほどとボクは頷いた。このまま三本入れられたら、泣き叫んでしまうだろう。
 「あのう、秀樹さん?」
 「なんだい?」
 ボクは少し躊躇ってから、思い切って尋ねた。
 「フェラチオしてあげましょうか?」
 「あ、いや。今日はいいよ。明日また来るから」
 そう言い残して、そそくさと去っていった。過去2回は、ボクは女だと思っていたからさせたのだろうけれど、今は男なのだ。男にフェラチオされるのには抵抗があったのだろうと思う。
 (ああ、気持ち悪い)
 違和感とジェリーのべとつきのためだ。着ていたものを脱いでシャワーを浴びた。シャワーを浴びながら指を肛門に入れてみた。少し緩くなったような気がした。
 (はあ。市丸のペニスを受け入れなければならないのか。飲むだけの薬はなかったのかな)
 恨めしく思った。

 月曜日、いつものように仕事を終えると、会社の前で車に乗った市丸が待っていた。
 「早く乗って」
 同僚たちの興味本位の視線を感じながら車に乗り込んだ。
 「アパートに直接来て貰ってもよかったのに」
 「付き合ってるのはもうみんな知ってるから構わないだろう?」
 そう言われると身も蓋もない。

 手料理なんてできないけれど、頑張って覚えた料理をしてやった。市丸は美味い美味いと言って食べてくれる。ホントかなと思うけれど、今日のショウガ焼きはまあ上手にできたとは思う。
 食べ終わって片付けが済むと、早速浣腸をしてネグリジェに着替えてベッドルームに移動した。
 少し痛みは軽いようだけれど、指を二本入れられると痛んだ。
 「ホントにフェラチオいいの? 遠慮しなくてもいいのよ」
 「止めとくよ」
 笑顔でボクの頬にキスして部屋を出て行った。ディープキスもなくなっている。

 水曜日は指が三本入れられた。痛かったけれど、最初に2本入れられたときくらいの痛みだった。
 木曜日も金曜日も三本だった。金曜日には少し痛みが和らいだ。そして土曜日、市丸は、大人の玩具を鞄の中から取りだした。
 「これが難なく受け入れられたら大丈夫だって言われてるんだ」
 ジェリーを塗り、ボクの中に押し込んだ。痛むけれど、指三本とあまり変わらないような気がした。
 けれど市丸はまだボクに挑んでは来ない。

 翌週はずっと大人の玩具を使って拡張が続けられた。そして、ついにその日がやってきた。金曜日のことだった。
 「正美、今日は薬を飲もう」
 「わかったわ」
 浣腸を充分に行い、化粧も入念にやり直した。そして、性転換薬のカプセルを飲み下してベッドルームに入った。
 キスくらいしてくれてもいいのに、市丸にはその気はないようだ。まだわだかまりがあるようだ。
 四つん這いになると、ショーツが降ろされ、ジェリーが塗り込まれた。ペニスにもジェリーを塗っているようだ。
 「正美、いいね?」
 「いいわ。来て」
 腰が掴まれる。ペニスの先っぽがボクの肛門に当たった。
 (ああ、ついに男のペニスを受け入れるんだ)
 感慨のような、一種奇妙な感情が湧き上がってきた。
 (あれ? どうして入れないんだ?)
 肛門付近でもたもたしているのだ。
 「どうしたの? 早く来てよ」
 「あ、いや。それが・・・。ああ、駄目だ。挿入できない」
 振り返って見てみると、少し萎えていた。
 「薬を飲んだのよ。何とかしないと」
 「わかってるんだけど、思えば思うほど駄目になってしまうんだ」
 アナルファックに興味があるのならばともかく、やむなくやろうとしているのだ。しかも、相手は女ではないのだ。気持ちはよくわかる。けれど、薬の効果が切れる前に、市丸の精液をボクの中に注入して貰わなければならないのだ。
 ボクは市丸のペニスを握ってしごいた。そして、口の中に入れて舌で舐め回した。すると、グイグイと持ち上がってきた。
 「もう大丈夫だわ。早く入れて」
 ボクは再び四つん這いになった。腰が掴まれ、ペニスが宛がわれた。肛門が押されるような感触がして入った。その瞬間、ゴクッと音がしたような気がした。
 「入った。入ったよ、正美」
 嬉しそうに言うと、腰を動かし始めた。少し痛いけれど、思ったほどではない。拡張が充分行われたからだろう。
 ボクの尻と市丸の腿が当たってパンパンと音を立てる。男のボクが進んで男を受け入れている。
 (ここはボクの住んでいた世界ではないんだ。自分を卑下することはないんだ)
 そう言い聞かせて、市丸の抽送を受けた。
 「ま、正美。行きそうだ」
 市丸が呻き、動きが速くなっていった。そして、ボクの中に深く押し込んで動きが止まった。直腸の奥に、何かが当たっているように感じ、それと同時に肛門が痙攀するように押し広げられた。
 (ああ、市丸が射精している。ボクの中に・・・)
 急に惨めな気分になった。
 (ああ、なんか、熱い)
 骨盤の中が熱くなり、それが急速に全身へ広がっていった。ボクの直腸の中に放出された精液が直腸の壁から吸収されて、血管を通って全身に広がっていった。そんな印象を持った。
 (ああ、もう引き返せない。ボクは女になるんだ)
 女への変化にスイッチが入った。そんな気がした。
 (それにしても、市丸の奴、なかなか抜かないな)
 そう思いながら振り向いて市丸の顔を見た。市丸はボクの思いを悟ったのか、ボクの腰を掴んだまま言った。
 「萎えて自然に抜けるまで待てって言われたんだ。ボクの精液が少しでも漏れ出ないようにしてるんだよ」
 数分後、市丸が抜けていった。抜けるなと言わんばかりにボクの肛門がヒクヒクと震えた。
 「アナルも結構いいね?」
 満足そうに呟いた。
 「今だけよ」
 ボクを女にして、市丸がホモになってしまうことがないように祈った。



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