第5章 デインジャラスな合コン


 レストラン街にある店のひとつに入ってケーキセットを注文すると、純がボクの顔を紗也伽の顔を見比べて言った。
 「従姉妹の割には似てないのね?」
 ボクはドキッとするけれど、紗也伽は平然として答えた。
 「わたしの父と梓のお父さんが兄弟なの。わたし、母似でしょう? 梓の方は叔母さん似なの。だから、あまり似てないのよ」
 「あ、なるほどね。で? 学校はどこを出たの?」
 3流だけど東京の大学を出ている。けれど、世間は狭いと言うから、ボクの出た大学の関係者を純が知っている可能性は完全に否定できない。
 「○○県立△△高校です」
 これは事実ボクの出た高校だ。
 「ふうん。高卒なの?」
 「純ってさあ、こう見えても大卒なんだよ」
 紗也伽が言う。
 「こう見えてもって何よ。大卒には見えないってか? 紗也伽!」
 「はい。高校も出ていないパープリンに見えるわ」
 純の着ているセーターは胸元が大きく開いていて、恐らくEカップ以上と思われる乳房がこぼれ落ちそうになっているのだ。
 「わたしのおっぱいには脳みそが詰まってるの」
 そう言って、胸を張った。それが本当にあるとすれば、普通の3倍の脳みその持ち主と言うことになる。
 ケーキセットが運ばれてきた。いったん話が途切れた。紅茶は美味しかったけれど、ケーキはスポンジがぱさぱさの上、甘ったるくて食べられたものではなかった。それでもふたりはぺろりと平らげてしまった。こんなところは、男と女の違いかもしれないなと考えていた。
 「で? いつ東京に出てきたの?」
 「え? ああ、先週です。紗也伽が一緒に住もうって言ってくれたから」
 「珍しいこともあるものね。ひとりがいいって言ってた紗也伽がそんなことを言うなんて」
 「お手伝いさんが欲しかったのよ」
 紗也伽がボクの顔を見て言う。
 「お手伝いさん?」
 「そうなんです。わたし、炊事・洗濯・掃除、全部やらされてるんです」
 「ああ、紗也伽、そう言うの、あんまり得意じゃないものね」
 「やれって言われれば、やるけどね」
 ボクが初めて紗也伽のマンションを訪れたとき、部屋の中は綺麗に片付いていたし、タンスの中も整理が行き届いていた。だから、それは事実だろう。
 「ところで、紗也伽。今度の金曜日、合コンをやるんだけど、あなたたちも参加しない?」
 「合コン? 25にもなって合コンはないでしょう?」
 純はボクと同い年だと知った。
 「何を言ってるのよ。紗也伽、今年の秋には大台に乗るんでしょう? ぼやぼやしていたら、あっと言う間にお婆ちゃんよ」
 つまり、紗也伽は29才ということだ。
 「相手は××商事のエリートサラリーマンよ。いい人が見つかるかもしれないわよ」
 「わたしはいいわよ。梓だけを誘って」
 バカなことを言わないでよとボクは紗也伽を睨んだ。
 「まあ、そう言わないで、ふたりとも参加してよ。お願い! この通り」
 テーブルの上に土下座するように頭を下げる。
 「金曜日かあ。何時からなの?」
 「午後6時半からよ」
 「ちょっと待って」
 紗也伽はバッグの中からノートを取り出してぺらぺらと捲った。
 「金曜日、金曜日。あら? 仕事は休みの上に、花金だというのに、予定がぜんぜん入ってないわ」
 「じゃあ、決まり。○○カメラ新宿西口店前で6時に」
 「わかったわ」
 ボクは肘で紗也伽を突いたけれど、完全に無視された。
 「今から何をするの?」
 「梓の服でも買いに行こうかなって思ってるの」
 「なら、わたしも行くわ。合コン用に可愛らしい服を買おうよ」
 「そうね。純はセンスがいいから」
 純に試着室の中のボクを見られたら拙いなと考えたけれど、紗也伽は気にしていない様子だ。ばれたときはばれたときと言うことなのかもしれない。

 ボクのウエストはかなり太い。だから、普通のスカートを穿いて、セーターや少し大きめのキャミソールを着て体型を誤魔化している。当然のことながら、ワンピースの類を着るのは無理だ。
 ところが、純が勧めてくるのはそんなワンピースばかりなのだ。
 「ちょっとデザインが」
 「ちょっとわたしには派手だわ」
 などと言って断るものだから、センスがいいと紗也伽のお墨付きを貰っている純としては、不満たらたらだ。
 「いったい、どんな服が好みなの! 梓は!」
 「梓はお子ちゃま体型なの。だから、ワンピースは着たがらないのよ」
 紗也伽が救いの手を差し伸べてきて、純はワンピースを諦めてくれた。ただ、持ってくるのはやたら短いスカートばかりなのだ。
 イヤだと言おうとしたら、紗也伽が似合うと言って無理矢理ミニスカートを購入させられてしまった。トップスも二十歳前後の女性が着るようなものを買わされた。
 「似合うからいいの」
 紗也伽はボクにそう耳打ちした。
 「じゃあ、金曜日に」
 純は手を振りながら、去っていった。
 「合コンなんて、行けないわよ」
 「梓なら、大丈夫。自信を持ちなさい」
 紗也伽はどうしてもボクを合コンに連れて行くつもりらしい。
 「もう! 行きたくない!」
 「行かないのなら、出て行って!」
 「ええっ! どうしてそうなるの?」
 「純と約束したのよ。梓が行かなかったら、わたしの顔が潰れるでしょう? そうじゃない?」
 そう言われれば行かざるを得ないのだが、男だとばれたらどうしようと不安は募るばかりだ。

 約束の金曜日、午後になって何も告げずに出掛けていた紗也伽が4時過ぎに戻ってきた。その手にデパートの袋を抱えていた。
 「なに? それは?」
 「梓をより女に近づけるアイテムよ」
 中から取りだした袋を破って、丈の長いブラジャーをボクに手渡した。
 「何なの? これは?」
 「それはね。ウエストニッパーとブラが一緒になったものなの。梓の太いウエストを隠してくれる優れものよ」
 「太いはないでしょう?」
 「太いじゃない?」
 ボクは膨れた。
 「でも、カップがハーフカップじゃ、シリコンの人工乳房が見えちゃわない?」
 「それにはいい方法があるの。裸になって、人工乳房をいったん取り外して」
 訳がわからずにボクは着ていたものを脱いで、シリコンの人工乳房をリムーバーで外した。
 「じゃあね。その人工乳房をそれぞれ乳首の外下あたりに接着してみて」
 「外下?」
 首を傾げながら人工乳房を接着した。紗也伽がボクの後ろに回ってブラジャーのストラップに腕を通してくれ、息を吸ってとボクに命じてから背中にあるファスナーを上げた。
 「人工乳房がカップの中に収まるように外から中に入れてご覧なさい」
 言われた通りにして驚いた。人工乳房が見えない上に、谷間ができていたのだ。
 「すごい」
 「そうでしょう? じゃあ、次はこれを穿いて」
 ピンク色のボクサーパンツのようなものを手渡された。やけに重い。
 「何か入ってるの?」
 「そうよ。女の子みたいにお尻を大きく見せるためのパッドが入ってるの」
 「これ有名なメーカーの製品でしょう? メーカーがこんなものを売ってるの?」
 「女の子でもお尻が小さくて下がっている人がいるでしょう? そんな女の子がヒップを格好良く見せるためのものなの。それは梓用に普通使うものよりも大きなパッドを入れて貰ってるわ」
 レース作りだと思ったのに、穿いてみるとかなりきつい。
 「ボクサータイプのショーツに見えるけど、実はガードルなのよね。つまり、ヒップを大きく見せる上に、梓の出っ張りを隠す機能もあるって言うわけ。なかなかいいわよ。鏡を見てご覧なさい」
 姿見に映してみた。胸があるように見えるし、ウエストも細くヒップも張っていて、女の子の体型だと思った。
 「これを着て見せて」
 紗也伽が取りだしたのは、先日純がボクに着せたいと言って聞かなかったワンピースだった。
 「その下着を身に着けていたら、着られると思うわ」
 そう言われて早速足を通してファスナーを上げてみた。ウエストも楽々通過した。なかなか可愛い。純のセンスがいいと言っていたことが実感できた。
 「じゃあ、化粧をバッチリ決めて出掛けましょうか」
 1時間かけて化粧を施し、紗也伽と颯爽と出かけていった。

 午後6時丁度に約束の場所に着いた。純が手を振りながら駆け寄ってきた。
 「あら? それを買ったのね?」
 「純が進めてくれたから、無理矢理着せちゃったのよ」
 「よく似合ってるわ。進めたわたしとしては嬉しいわ」
 似顔の純にボクはありがとうございましたと頭を下げた。
 「少し早いけど、会場に行きましょう。こっちよ」
 純のあとについて歩いていった。

 5分ほど歩いた場所にある会場は、和洋折衷の小綺麗な店だった。真ん中に黒塗りのテーブルがあり、右の手前にスーツ姿の男がひとりぽつねんと座っていた。
 「こんばんわ。お世話になります」
 純が頭を下げると、早く来すぎましたと言ってその男は恐縮した。
 「紗也伽は一番奥に、その次に梓ね」
 奥に進んでコートを脱ぎ、ハンガーに掛ける。男はボクたちの方をじっと見ていた。すぐに男2人がやってきて、真ん中に陣取った。続いて、純の友人らしい女性が2人入ってきて、ボクの隣に並んで腰を下ろした。
 純が時計を見た。まだ10分ほどある。
 「ごめん。遅くなって」
 2人の男がやってきて、ボクたちの前に座った。
 「早いけど、みんな揃ったので始めましょうか?」
 5対5の合コンが始まった。

 自己紹介のあと、生ビールで乾杯し、雑談が始まった。
 「紗也伽さんって、背が高いね。いくらあるの?」
 ボクの正面にいる男は、紗也伽ばかりに話しかける。一番奥にいる男が気を遣ってボクに声を掛けてきた。
 「可愛い服だね?」
 「ちょっと子どもっぽいかしら?」
 「そんなことないよ。似合ってる」
 笑顔を向けてくる村田というその男は、ボクが男だなんて夢にも思っていないようだ。心の中で笑う。楽しくて仕方がない。
 「えっ! 紗也伽さんの従姉妹なの?」
 「あんまり似てないけど、そうなんです」
 そう答えると、紗也伽とばかり話をしていた新納という男がようやくボクの方に注視した。
 「そう言えば、口元が似てるかな?」
 いい加減なことばかりをと思ったけれど、笑顔を向けておいた。

 5対5だけれど、席を移動するわけではないので、話をするのは前にいる村田と新納とばかりだ。純を含めた隣に3人は、向き合った3人とばかり話していた。
 (2対2と3対3みたいなものだな)
 そう思いながら話を続けた。

 午後8時になり、合コン自体はお開きになった。
 「2次会に行きましょうか?」
 新納が言いだし、村田も賛意を示した。
 「紗也伽、どうするの?」
 「行きましょうか? 時間も早いことだし」
 紗也伽が一緒ならと、他の6人と別れて4人で新納知っていると言うスナックに出向いて行った。

 連休前の花金だというのに、そのスナックにはお客がいなかった。奥から村田、紗也伽、ボク、新納の順に座り、男たちは水割りを、ボクと紗也伽はカクテルを作ってもらって乾杯した。
 「K-20、見に行きました?」
 「いえ。面白いって聞いたから、明日にでも見に行こうと思ってるんですよ」
 「是非見たらいいですよ。面白いから。それにボクも出てるし」
 「えっ! あの映画にですか?」
 「ああ。金城武って芸名で出てるんですよ」
 村田が真顔で言うのには、ボクたちは笑ってしまった。
 (こいつら、ボクたちを口説くつもりがあるんだろうか?)
 村田は紗也伽に気があるように見えるけれど、はっきりと口説く様子が見えないのだ。
 (ただ、女を相手に酒を飲めばいいのかな?)
 午後9時になって、紗也伽がそろそろ暇をと告げたときにも、それならとあっさり会計を始めたことからも、合コンに来る目的が違うんだと考えていた。
 スナックを出てご馳走様でしたと頭を下げたとたん、ふらっとした。
 「あれれ? 飲み過ぎちゃいましたか?」
 新納がボクを支える。紗也伽も額を押さえている。ちょっと休んでいきましょうかという声に、これはおかしいと思い始めていた。

 眠っていたようで、目を覚ますとコートもワンピースも剥ぎ取られていて、新納がボクの履いているパンストを脱がしていた。
 (大変だ。逃げなきゃ)
 そう思うのに、身体が動かなかった。
 「変な下着を着けてるんだな」
 そう言いながら、ボクの穿いていたガードルを降ろしていった。
 「なっ! なに!! おまえ、男なのか!」
 驚きに目を見張る新納をぼんやりとした目で見ていた。新納は携帯を取りだして電話を掛け始めた。
 「村田! こいつは男だ。そっちはどうだ? そっちは女か。くそっ! まさか男だとは思わなかったぞ。なに? 男だってやれるだろうって? ・・・そうだな」
 新納がボクの顔をじっと見た。
 「見かけは女だからな。ケツを使えばいいか。わかった」
 携帯を切ると、新納はニタリと笑って着ている服を脱ぎ始めた。そして全裸になるとコンドームをして、ボクの膝を抱えた。
 「さあて、女とどっちがいいかな?」
 イヤだと思っても身体はまったく反応しない。ただ、新納の進入ははっきりと自覚できた。
 「おお、結構いいぞ。締まるぞ。締まる」
 新納は腰を動かしながら、ボクに唇を重ねてきた。
 「ディープキスできないのと、フェラをやってもらえないのが残念だなあ」
 新納はガンガン突き続けた。身体は動かないけれど、快感はあった。どんどん上っていくのがわかった。
 「ああ、ああ、ああ、ああ、ああん・・」
 ボクの口から声が漏れていた。
 「感じてるのか? いつも女の格好をして男を漁ってるんだろう」
 やがて新納は絶頂を迎え、ボクの中で爆ぜた。ボクも凄く感じて射精し、意識を失っていた。
 目を開くと、新納が携帯を掛けていた。
 「終わったか? こっちも結構よかったぜ。じゃ、交代しようぜ」
 簡単に服を着た新納が部屋を出て行き、交代に村田が入ってきた。
 「へえ、本当に男だよ。気がつかなかったなあ。じゃあ、味見をさせて貰うとするか」
 全裸になるとコンドームをして、ボクに挿入した。何度も突かれないうちにボクは上り始め、喘ぎ声を上げていた。
 「ほう。確かにいいや。むしろ女よりもいいくらいだ」
 言いながら村田は腰を動かした。紗也伽とやっているからだろう、なかなか行かない。ボクの方は、何度も小さく行き、ペニスの先からザーメンがそのたびにチロチロと漏れ出ていた。

 村田がいつ行ったのか、いつ出て行ったのかわからない。目を覚ますと夜が明けていて、スズメのさえずりが聞こえていた。



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