第4章 誰が見ても女の子


 紗也伽はボクを抱き寄せると、唇を重ねてきた。
 (やったあ。女装してまでここに留まってよかったぞ)
 ボクの唇を割って紗也伽の舌が入ってくる。ヌラリとしたその感触が気持ちいい。ボクの紗也伽の舌を吸った。
 キスしながら紗也伽はボクの装着している人工乳房を揉み始めていた。
 (ボクも揉んでもいいのかな?)
 恐る恐る紗也伽の乳房を触った。紗也伽はもっと強くと言わんばかりに押しつけてきた。ボクは心の中でもう一度やったあと叫びながら、紗也伽の乳房を揉んだ。柔らかくてすごくいい触り心地だ。
 紗也伽の手がボクの股間に降りてきた。ショーツの上からさわさわと触る。すでに勃起していたボクのペニスがショーツの上からは見出していった。
 「身体の割に大きいのね?」
 「普通ですよ」
 「フェラしてあげるね?」
 願ったり叶ったりだ。紗也伽はずり下がっていって、ボクの着ているネグリジェをまくり上げてショーツを下ろし、ボクのペニスをパクリと咥えた。
 舌という名前の軟体動物がボクのペニスを這い回る。すぐにも行きそうなのに、何故か行かなかった。
 「今度は梓の番よ」
 ずり上がってきて、ボクの唇に軽くキスして言った。紗也伽のネグリジェの中に頭を突っ込み、ショーツを下ろした。
 恥骨の上にほんのわずかな陰毛が見えた。紗也伽も脱毛剤か何かで処理しているようだ。その下にヒダに覆われたクリトリスが見えた。イヤ、先端が少し見えている。ヒダはあまり色素沈着がない。
 (もしかして紗也伽はレズで、あんまり使っていないのかも)
 そんな想像をしてしまう。舌を這わせると、アアンと紗也伽は悩ましげな声を上げた。ヒダを下に降りていくと、ぬらぬらした粘液が溢れていた。少ししょっぱい。愛液の味だ。
 「梓、クリちゃんをもっと強く吸って」
 呻くように言うのでクリトリスを吸ってやった。こんなに強く吸ってもいいのかなと思いながらギュウギュウ吸ってやったけれど、紗也伽は身体を震わせて喜んでいる。
 クンニも疲れたなと思っていると、紗也伽は身体を回してボクの上になった。そして、ボクの顔の上に馬乗りになって、腰を振った。ボクの鼻を使ってクリトリスを自ら刺激しているようだ。
 紗也伽は気持ちよさそうに喘いでいるけれど、ボクの方は鼻と口を塞がれて息が苦しくて死にそうだ。
 (し、死ぬう・・・)
 気が遠くなったとき、紗也伽がボクから離れた。そうして騎乗位でボクを紗也伽の中に導いた。レズではなかった。
 (わおっ! いい感触だ)
 まとわりつくような何とも言えない感触にボクは感激した。あんまり経験はないけれど、こんな女性とするのは初めてだった。
 紗也伽は自分の乳房を揉みながら腰を上下させている。その悩ましげな表情は最高に美しいと思った。
 やがて紗也伽は身体を横に倒してボクと体位を入れ替えた。
 「突いて。壊れるくらいに。お願い」
 言われなくてもボクはガンガン突いていた。
 (ああ、行きそうだ。でも行かない。どうしてなんだ?)
 こんなに長くピストン運動をしたことなどなかった。紗也伽が、泡を吹くようにして身体を痙攀させ始めてようやくボクは達した。
 紗也伽は荒い息をしながら、あなたを選んで正解だったわとボクに囁いた。ちょっと嬉しかった。

 午前10時、紗也伽を起こさないようにベッドから滑り出ると、コーヒーをセットしてからシャワーを浴びた。
 外れ掛けていた人工乳房を接着し直して、花柄のブラとショーツを身に着けた。袋の中に入っていた白のブラウスを着て、黒のフレアスカートを穿いた。
 カップにコーヒーを注ぎ分けていると紗也伽が起き出してきた。
 「おはよう、梓」
 「おはようございます、紗也伽さん」
 「紗也伽でいいわよ」
 そう言い、コーヒーカップをボクから受け取った。紗也伽はノーブラ、ノーパンでコーヒーを啜る。
 「コンドーム、しなくてよかったんですか?」
 終わったあとになって気になったのだ。
 「ああ。ピルを飲んでるから大丈夫よ。あのコンドームってイヤなの。だから、昔からピルを使ってるの。それに、男って、生の方が喜ぶでしょう?」
 そうですねとボクは小さく頷きながら、あそこはあんなに綺麗だったのに、かなり経験があるんだと考えた。
 「生だと病気が気になりませんか?」
 「相手を選んでるからね」
 「ボクも?」
 「もちろんよ。梓は女性経験があまりないって聞いてたから大丈夫だと踏んだの」
 「あいつがそんなことを?」
 「違うの?」
 ボクは小さくなるしかなかった。
 「シャワーを浴びてくるわ。食事をよろしくね?」
 「下ごしらえはすんでますから、すぐにできますよ」
 炊きあがりを予約していた飯はすでにできていた。
 「そう。梓?」
 「はい?」
 「女の格好をしてるんだから、女言葉にした方がいいわよ」
 「あ、はい」
 紗也伽がシャワーを浴びている間に卵焼きを作り、味噌汁を仕上げて置いた。今日も美味しいと言って食べてくれた。

 食器の片付けを終えて洗濯をしようとすると、1日おきでいいわと言った。
 「シーツが汚れてるし」
 「だったら、やればいいわ」
 不機嫌そうに言った。自分の言うことを聞かないとそういう態度になるように思えた。一度言ってしまったので、洗濯機を掛けてから、掃除はどうしましょうと尋ねてみた。
 「そうね。掃除も1日おきでいいわ」
 「じゃあ、そうします」
 ニコニコしながら待っていると、お化粧を教えてあげるわと言い、ボクをドレッサーの前に引っ張っていった。

 お肌の手入れを教えてくれたあと、ベースのやり方をコーチされた。
 「脱毛しても髭の跡がどうしても残るでしょう? このコンシーラーで消すの」
 わずかな青タンが完全に消えた。目の下のクマやシミも同じコンシーラで消された。さらに色違いのファンデーションでメリハリをつけている。パウダーをパタパタやると、のっぺりとしてはいるけれど立体感はある顔になっていた。
 「次は眉ね」
 少し短く切り揃えられてから、眉墨でさらに綺麗な眉に整えられた。
 「アイメイクが一番大変だけど、一番重要でもあるのよ。しっかり覚えてね」
 アイライン、アイシャドウに相当時間がかかった。
 「梓、女の子みたいに睫が長いから、わたしみたいな付け睫は不要ね。マスカラだけで充分だわ。羨ましいわ」
 マスカラをつけ終わると、目の大きさが倍になったように感じた。
 「次、行くわよ」
 チークで頬がはっきりとし、ルージュを塗ると、見違えるような顔に変わっていた。
 「はい、ウイッグを被って」
 ブラッシングすると、十人並みよりは少し美人に近くなっていた。
 「これならわたしの従姉妹で通じるわね?」
 「従姉妹にしてはちょっとブスですよね?」
 「そんなことはないわよ。充分可愛いと思うわ」
 美人じゃなくて可愛いかと思っていた。どうせ女装するなら美人の方がいい。
 「さあ、クレンジングで落として、教えた通りにお化粧をやり直して。わたしはちょっと出掛けてくるから」
 紗也伽が出て行ったあと、鏡に向かって化粧を施した。たった今教えて貰ったことができない。午後4時まで、何度も何度もやり直した。
 結局満足する仕上がりにならず、やむなく夕食の準備に取りかかった。

 夕食がすんで紗也伽が出掛けていったあと、ボクは再び化粧に挑戦した。上手く行かないのを放置するのは性に合わないからだ。
 (うーん、今度も駄目だな。ちょっと時間をおこう。女らしい仕草の練習だ)
 ひとしきり女らしい振る舞いの練習をしたあと、もう一度化粧をやってみた。紗也伽がやってくれた化粧ほどではないけれど、何とか見られるくらいの仕上がりになったときには午後11時を回っていた。
 紅茶を入れてビスケットを2枚食べた。紗也伽からあんまり食べて太ったら駄目よと言われていたせいもあったし、スカートが少しきつくて、太ったら穿けなくなりそうだったからだ。

 紅茶カップを洗ってからテレビを見ていたら、いつの間にか眠っていたようだ。目を開くと、目の前に紗也伽の顔があった。
 「こら! 起きてわたしを待ってる約束だったでしょう?」
 「あ、ああ。ごめんなさい。お化粧の練習で疲れてしまって」
 起き上がって居住まいを正す。
 「うん。なかなかよく仕上がってるわ」
 「そうですか?」
 やはり褒められると嬉しくなる。
 「お化粧は置いといて、起きてわたしを待っているという約束を破ったペナルティを課さないとね」
 「えっ! ペ、ペナルティー!」
 どんなペナルティーを課されるのか戦々恐々だ。
 「そうねえ。じゃあ、ストリップをやって貰いましょう」
 「ストリップ!」
 「そうよ。踊りながら一枚一枚脱いでいって。さあ、チャンチャカチャンチャ、チャンチャンチャン」
 床の上に座り込んで手拍子をする紗也伽に、ボクは不満たらたらの様子を見せながらクルクル回りながらスカートを降ろし、ブラウスを脱いだ。
 「へい、へい。いいぞ、いいぞ」
 まるでオヤジみたいに言う。
 「ブラは後ろ手に外すのよ」
 言われて両手を背中に回した。一応ホックに指がかかるけれど、肩が痛い。ホックを外そうとしたら、スジを違えて痛みが走った。
 「何、やってんのよ。早く外して」
 痛みに表情を曲げながら何とかホックを外してブラジャーを抜き取った。
 「ショーツは腰の部分に親指を入れてお尻を振りながら脱ぐの。さあ、やって」
 言われた通りにすると、ペニスが引っかかって脱げなくなった。勃起していたからだ。
 「あら? 梓、妙なものが付いてるのね?」
 ボクは口を尖らせて紗也伽に背中を向けた。
 「さて、次のペナルティーは・・・」
 「えっ! まだペナルティーを課すの?」
 「そうよ」
 「破った約束はひとつなのに、ふたつもペナルティーを課すなんて酷いわ」
 「あら? わたしが帰ってきたとき、起きていて、わたしを迎えるって言う約束でしょう?」
 「そうですけど・・・」
 「起きていて、そして、わたしを迎える。わかる? 梓はふたつの約束を破ったの」
 「そんなあ」
 「つべこべ言わないの! そうね。オナニーをやって見せて」
 「えっ!」
 「さ、早く!!」
 二つ目のペナルティーを紗也伽が考え始めたとき、きっとそう言うんだろうなと予感していた。イヤだと言うよりも、紗也伽の前でやってみたいと思っていた。けれど、嫌がる素振りをしながらボクはペニスをしごいた。
 ボクはずいぶん興奮していたみたいだ。あっと言う間にザーメンを吐き出していた。
 「きゃあ、よく飛ぶのね。2メートルは飛んだかしら?」
 そんなに飛ばないでしょうと思いながら、ボウッとして立っていた。紗也伽が猫のように四つん這いでボクによって来て、萎え始めていたペニスをぺろりと舐めた。痛みに似た快感が走った。
 紗也伽はそのままフェラチオを始め、上目遣いにボクを見て柔らかいペニスを舐めるのも一興ねと言い、ニタリと笑った。
 それからベッドに直行した。続けていくことなんてできない。だから、長い時間紗也伽を突いた。紗也伽は死ぬうと何度も絶叫を上げて行っていた。

 翌日、朝食をすませた後、紗也伽にコーチして貰って化粧を施した。コーチがいるのといないのとでは仕上がりがまったく違う。
 「まあ、なれよね」
 紗也伽は簡単に言った。
 「女の子としての振る舞いもまあまあだし、買い出しに出掛けましょうか?」
 「え、ええっ!」
 「そんなに驚くことないでしょう? 今の梓だったら大丈夫。黙っていれば誰にも気づかれないわよ。さあ、行きましょう」
 有無を言わさず連れ出された。まあ、紗也伽と一緒だからと少しは気が楽だった。

 スーパーまで歩いていると、ヒューと口笛を吹く男たちがいた。どぎまぎするけれど、もちろんそれは超ミニを穿いた背の高い紗也伽に向けられたもので、見劣りするボクは彼らの眼中にはないようだ。それはボクにとっては幸いでもあるけれど、ちょっと悔しくもあった。
 買い出しはまったく問題がなく、ボクと紗也伽は真っ直ぐにマンションに戻った。
 「ね? 誰にも気づかれなかったでしょう?」
 「紗也伽がそばにいたからよ。わたしひとりだったら、どうなっているか、わからないわ」
 「そんなこと、ないわよ。絶対に大丈夫だから。そうだ。正月明けの月曜日、一緒にデパートにショッピングに行きましょう。いいわね?」
 ボクの返事を待たずに紗也伽はマンションを出て行った。
 (確かにばれないとは思うけど、声が出せないから誰かに声を掛けられたら困るんだけどなあ)
 玄関にある姿見を見ながら思案した。
 (女の声を出せるようにすればいいんだ)
 早速練習を始めた。裏声を出すだけでは上手く行かないようだ。溜息をつきながらテレビをつけた。テレビに映っている女性タレントを見ていて、女の子は身振り手振りが大きいんだと気づいた。
 (テレビを見ながら、真似をしてみよう。女らしい仕草の練習にもなるし)
 紗也伽がいる間は何となく気恥ずかしくて、紗也伽がいない時間に女の声を出す練習をした。

 正月休みが過ぎ去り、そして問題の月曜日になった。もはやひとりでできるようになった化粧をバッチリ施して、紗也伽と一緒に出かけた。
 「まず下着を買いましょうね」
 男の場合、下着なんて3組もあれば充分だった。けれど、女装していると3組ではとても足りないと感じた。それは上に着るものによって変えなければならないからだ。
 (わあ、すごいなあ)
 男にとってデパートのランジェリーコーナーは異世界だ。いつもは見て見ぬ振りをしていたものをまともに見られるのは嬉しい限りだけれど、興奮してしまうのだ。
 悪いことに、ボクは例のデニムのミニスカートを穿いていた。だから、勃起してくると前が膨らんでしまうのだ。
 さり気なくバッグを前に持ってきて隠しているけれど、ばれないかと気が気でない。
 「これとこれなんかどうかしら?」
 紗也伽が結構派手な下着をボクの目の前に翳した。
 「ええ、それでいいわ」
 女声で答えると、紗也伽はかなり驚いた表情を浮かべ、いつから女声を出せるようになったのと尋ねた。
 「あら? わたし、女の子だもの。生まれたときからよ」
 そう答えると、それにしては妙なところが膨らんでるわねと応酬された。
 「ガードルを買いましょう」
 ブラとショーツのセットを3組とガードルを2枚買い、トイレで早速ガードルを穿いた。膨らみがスカートに響かなくなり、少し安心してショッピングできるようになった。
 「紗也伽じゃないの。久しぶり」
 会計を終えてランジェリーコーナーを出てすぐに、可愛らしい女性に声を掛けられた。
 「あら? 純、久しぶりね。何してるの?」
 「何してるって、ショッピングに決まってるでしょう? あら? そっちの子は?」
 「ああ、わたしの従姉妹。梓って言うの」
 ボクは梓ですと頭を下げた。
 「初めまして。わたし、純、三ヶ尻純です。紗也伽とは昔一緒に働いていたことがあるの」
 ボクの方が少し可愛いと思うけれど、えくぼがとてもチャーミングな子だ。
 「こんなところで立ち話も何だから、お茶でもしましょうよ」
 そんなことをしたら、男だとばれないかなと考えながら、仲良く手をつないで歩き始めた2人の後に付いていった。



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