第12章 本当の妻になれた


 ホテルの最上階にあるスイートルームで、ボクは桜井に貫かれて喘いでいた。性転換すれば、汚いところに受け入れなくてすむと言う期待感もあるけれど、手術がすごく不安だ。だから、喘いである割に乗れなかった。
 「大丈夫だ。腕のいい医者を捜してあるんだ」
 必ず結婚を承諾してくれると思っていたから準備をしていたと桜井は続けた。
 「腕がいいって、安全にやってくれるって言う意味? それとも、仕上がりが綺麗って言う意味?」
 「両方だよ。安全で、しかも、一見したのでは本物の女とまったく区別が付かないくらいに仕上げてくれるんだよ」
 少し大袈裟すぎるんじゃないかと思ったけれど、安心したわと答えておいた。
 「さあ、もっと気を入れていこう」
 桜井はガンガン突く。不安はやがて快感に消されていき、ボクは本気で喘ぎ、そして何度も行った。

 2日後の土曜日、桜井に連れられて手術をしてくれる医者の元を訪れた。
 「素材としては申し分ないね。任せてなさい。どこから見ても女にしてあげるよ」
 長谷川というその医者はボクを診察したあと、自信たっぷりに言った。
 「仕上がりはどうなるんですか? 写真とかはないんですか?」
 「性転換手術を手がける医者の中には、手術後の写真を見せて安心させる奴らもいるが、わたしにはそう言った趣味はないんだ。仕上がりを見せたくなって言う意味ではないんだ。見せたところで、本物の女性の写真を撮って見せていると言われるだけなんでね」
 自信たっぷりに言った。
 「ホントに本物そっくりにできるんですか?」
 「信じないのなら、やらなければいいさ」
 ちょっと怒ったように言われて、すみません、信じますと答えざるを得なかった。
 「では、採血とレントゲン撮影をしておこう」
 日曜日の夕方入院、翌月曜日の夕方手術の段取りとなった。

 日曜日、入院道具一式を大きなバッグに詰め、マンションを出発した。すでに暗くなり始めていた。
 病院の門を通り抜ける。
 「えっ! 精神科の病院?」
 「言ってなかったかな? 先生は、趣味で性転換手術をやっているんだよ。凄く手間暇を掛けて、綺麗にしてくれる。その上、ただなんだ」
 「ホントに大丈夫なの? ただほど高いものはないって言うわ」
 「大丈夫だよ。この先生に頼んだのは、高度な手術技術なのに手術料がただと言うだけではなく、2年間女性として暮らした実績とか精神科の医者の証明などの法的な手続きを経ない違法な手術だから、証拠が残らないんだよ。残せないと言った方が正しいかな?」
 「でも、そうなったら、女の戸籍が手に入らないんじゃ?」
 「それは心配するな。わたしが手に入れておくから」
 不安だけど、桜井もまた自信たっぷりに言うので信じることにした。

 一夜が明け、朝から手術に向けた準備が進んでいった。いろいろと考える暇がないくらいだ。
 そして、手術室に運ばれた。
 「梓、わたしも手術に立ち会うからな。梓が女に生まれ変わるところを確かめたいんだよ」
 緑色の手術着を着た桜井がボクの手を握って手術室の中まで入り、そうボクに告げた。心強かった。
 背中に麻酔が打たれ、下半身が痺れて感覚がなくなった。両足が大きく広げられて手術台に固定される。
 長谷川がボクの股間に茶色の消毒液を塗りたくり、緑色のシーツが掛けられてた。ボクには何も見えなくなったけれど、すぐにテレビのモニターがボクのそばに据え付けられた。
 「これで手術の様子が見られるよ」
 長谷川はそうボクに告げ、両手をブラシで洗って手術着に着替えた。テレビモニターに長谷川の頭が映り、サインペンのようなもので印をつけ始めた。
 「では、術式を始めます。メス」
 メスを持った長谷川の手がボクの股間にすっと近づいていった。突然ボクの脳裏にこんなことをしてはだめだとの思いが浮かんだ。両親や兄夫婦に迷惑がかかると考えたのだ。
 「せ、先生! 止めて! 手術は止めて!」
 「怖がることはないよ」
 「違うんです! こんな手術、受けちゃいけないんです!!」
 どうするんだねと長谷川が桜井に尋ねた。
 「一時的な気の迷いですよ。やってください」
 桜井が答え、メスがボクの股間に当てられた。
 「止めて! 止めて! 止めて!!」
 叫ぶけれど、長谷川はメスを動かしていった。ボクの股間に赤い筋が入り、真っ赤な血が流れ始めた。
 「止めてよ! お願いだから!!」
 「電気メス」
 長谷川はボクの叫びなどまったく無視して手術を進めていった。
 「これが睾丸です。根本にある血管と輸精管を結紮して切り離します」
 糸で薄ばれるとき、ズンとした痛みが走った。右の睾丸が、そして左の睾丸が切り取られてしまった。
 手術は進み、ボクのペニスは皮を残して切り取られた。ボクは止めてと叫ぶ代わりに泣き始めていた。
 ボクの身体に膣となる穴が開けられるのを茫然と見ながら、いつの間にか眠り込んでいた。

 目を覚ますと、手術室ではなく病室に戻っていて、桜井がボクの手を握っていた。
 「終わったのね?」
 「ああ、終わったよ。梓は今日から女だ」
 止めてと言ったのに、手術は終わってしまった。絶望している。けれど涙は出なかった。泣いても叫んでも元には戻せないことはわかっていたからだ。
 「あなた。ホントに結婚してくれるの?」
 「あたり前だ。そのために手術を受けて貰ったんだからな」
 「信じていいのね?」
 「ああ。来年3月、ロスで結婚式だ。切符はすでに用意してある」
 「向こうに行くにはパスポートがいるでしょう?」
 「わかってる」
 桜井は、床の上に置いた鞄の中から書類を取りだした。
 「これは、女になった梓の新しい戸籍だ。それに簡単な履歴書を書いてきた。これを見てよく覚えるんだ」
 受け取った戸籍謄本と履歴書を見た。名前は二宮真美。年齢25歳。本籍は新潟県で、最終学歴は短大とある。
 「両親は亡くなっているんですね?」
 「好都合だろう? 結婚してしまえば、姓も本籍も変わる。年齢もひとつ若返るし、いいこと尽くめだろう?」
 「名前が変わるのはいやだけど、仕方がないわね?」
 「なれるしかないだろうな。これでパスポートを取っておくからな」
 ボクは二宮真美になる。まだ実感はわかないけれど、やがてなれていくのだろう。梓と呼ばれることに慣れたように。

 一夜が明けた。傷がまったく痛まないのは不思議だ。
 「特殊な麻酔で痛まないようにしてあるんだよ」
 傷を見に来た長谷川がそう説明した。手術という言葉を聞いて一番の心配は痛みだ。それがないのだから、ずいぶん楽だ。
 「膝を立てて、少し開いてみて。ちょうど正常位でセックスするみたいにな」
 長谷川はにたりと笑って命じた。まさに正常位だなと思いながら、長谷川が傷を覗き込むのを見ていた。
 「よし、よし。いいできだ」
 「先生。それって、自画自賛って言うんじゃありませんか?」
 「いや、掛け値なしにいいできだよ。見てみるかな?」
 「え? ええ。是非」
 長谷川は、ボクがそういうと予想していたかのようにポケットから鏡を取り出してボクに渡した。右手に持って角度を調節する。
 「これがクリトリス。これが小陰唇ですか?」
 左ひとさし指で指す。
 「そうだ」
 これで本物そっくりになるのか心配になる。クリトリスは、土から生えた蕗の薹だし、小陰唇は、芋虫に見えたのだ。
 「心配はわかる。腫れが引けば、綺麗になるよ」
 ボクの表情を見て長谷川がいいわけがましく言った。
 「ガーゼらしいものが詰めてあるのが腟なんですね?」
 「膣というか、膣となる穴があるところだな」
 意味不明だった。
 「今、陰嚢の皮膚とペニスの皮を使って腟壁を作っているところだ。本物そっくりの膣にするために少々工夫をしているんだよ」
 「作っているっておっしゃると、もう一度手術するってことでしょうか?」
 「ああ。ただ、簡単な手術だよ。膣に詰めたガーゼを取り除いて、膣になる皮膚を押し込んで入り口の皮膚を縫合する。それだけだよ」
 簡単と聞いて安心した。
 「手術は1週間後だ。それまでの間、手足の永久脱毛をやっておこう。いいね?」
 「はい」
 ボクは明るく答えた。数日おきに脱毛するのは大変だったからだ。
 「ところで先生?」
 「何だ?」
 「胸が大きくなっているような気がするんですけど?」
 胸を両手で押さえてみた。どう見ても、大きくなったように思える。
 「大きくしたからな」
 「豊胸術をやったんですか?」
 ウエスト周りの脂肪を吸引して胸に注入しておいた。ウエストが細くなって、胸が大きくなる。一石二鳥だ」
 確かにウエストも細くなっていた。

 1週間後、膣の移植をするために手術室にいた。モニターにボクの股間が映し出されている。腫れが引いて、クリトリスは少し皮をかぶったようになり、小陰唇は薄くなりビラビラと呼ぶにふさわしい形に落ち着きつつあった。
 「膣の移植を始めるよ」
 膣の中に納められていたガーゼが抜き取られ、シリコンらしい棒に貼り付けられた膣の壁が穴の中に押し込まれた。シリコン棒が引き抜かれると、入り口あたりをチマチマと縫っている。簡単な手術だと言っていたのに、相当時間がかかった。
 「丁寧に縫わないと、綺麗にならないんだよ」
 ボクが簡単な手術じゃなかったんですかと尋ねた返事だ。

 喉仏を取られ、声を高くする手術も受けさせられた。
 (梓の声に似ているような・・・)
 甘ったるい声を出したら、かなり似ているような気がした。
 「少し美人にしてもらえませんか?」
 「ご主人が今の君でいいと言ってるんだ。整形などしたら、ご主人に怒られるよ」
 ボクとしては整形したいけれど、桜井がいいというのなら諦めるしかない。

 2月中旬、ようやく退院になった。この間、いろいろとあった。小便を座ってするのはいいけれど、まっすぐに飛ばないのだ。いろいろと工夫して、まっすぐ飛ぶようになった。
 「尿道の腫れが引いたからだよ」
 長谷川はボクの努力を認めてくれなかった。
 「膣拡張とストレッチはやっているね?」
 「はい。やってます」
 膣拡張はもちろんせっかく作った膣が狭くならないように、なくなってしまわないようにと言う目的だ。
 ストレッチしないと将来的に腟脱になると脅されたし、桜井を喜ばせる目的もあると言うからせっせとやった。
 (長谷川先生、確かに腕がいいや)
 トイレでこっそり鏡で見て、ボクは驚きを禁じ得なかった。腫れが引き、陰毛が少し生えたボクの股間は、どう見ても女のものに見えたのだ。
 「梓、いや、真美。ずいぶん女らしくなったな?」
 「ふふ。そう?」
 股間を見られても絶対に男とはばれないと思うと、自信がつき、それが態度に表れたのだ。
 「先生、お世話になりました」
 桜井とともに頭を下げて、夜陰に紛れてマンションに戻った。

 マンションに戻ると、早速桜井はボクを抱き寄せた。
 「するの?」
 「先生の許可が出ているし、本当はしたいんだが、挙式するまで待とうと思う。それでいいな?」
 そんな答えが戻ってくるなんて思いも寄らなかった。嬉しくて、フェラチオしてやり、吐き出されたものをすべて飲み下してやった。

 約束通りロスの教会で式を挙げた。プリンセスラインの豪華なウエディングドレスでの挙式。こんなに幸せな花嫁姿を両親に見せたいと思ったけれど、それは叶わぬ夢だ。
 ホテルでの初夜の儀式。ついにこの日がやってきたと思った。そう。桜井にボクの処女をあげる日が。
 「準備をしてくるわ」
 「なんの?」
 「あ、そうか。でも、わたしの膣は濡れないから、ジェリーを塗り込んでおかないと」
 「先生は濡れるかもしれないと言ってたぞ。まずはやってみよう」
 桜井はボクをベッドに運び、愛撫しながら着ているものを脱がしていった。BとCの間くらいになったボクの胸を嬉しそうに揉みながら乳首を舐めている。
 桜井の怒張したペニスがボクの腿に触れている。そんな桜井と同じくらいにボクも興奮しているのだけれど、濡れた感じがしない。
 桜井がクンニを始めた。クリトリスがビンビン感じる。けれど、小陰唇は少し麻痺しているようだ。
 「うーん。これだけやっても濡れてこないな」
 「まだ2ヶ月ちょっとよ。まだ無理よ」
 「仕方がないな」
 言いながら、枕元まで持ってきていたジェリーを指にとってボクの膣に塗り込めていった。
 「ほう。中の触り心地は、まるで女だ」
 「女に膣、わかるの?」
 「若い頃は、男ではなく女と遊んだからな」
 「わたし以外の女とも男とも遊んじゃいやよ」
 「わかってるよ」
 ペニスにもジェリーを縫って、ボクの足の間に入ってきた。
 「さあ、真美の処女をいただくよ」
 いつもと違った場所に桜井のペニスがあてがわれた。
 「行くよ」
 入ってきた。メリメリとまるで開かずの扉をこじ開けるように。
 「い、痛い!」
 拡張しているはずなのに、強烈な痛みだ。
 「処女だからな。少し我慢しろ」
 止めるつもりなど毛頭ないようだ。ボクが痛い、痛いと叫んでも腰を動かし続け、そして、5分もしないうちに果ててしまった。
 「処女とやっていると思うと興奮してしまった。溜まっていたしな」
 弁解がましく言った。ボクの方は痛いばかりで、感じるどころじゃなかった。
 「おっ! 血が出てる。いいねえ、処女は」
 まさに処女を失った瞬間だった。

 ハワイに寄って、ワイキキの浜辺で戯れ、ダイヤモンドヘッドに登ったりして数日を過ごしたあと、帰国した。
 いつもの主婦業に戻った。けれど、それは今までのものとは違っていた。
 (桜井の妻だものね)
 取り寄せた戸籍謄本には、入籍して間違いなく桜井の妻になったことが記されていた。
 (でも、行けないなあ。いつになったら行くことができるんだろうか? いっそのこと、アナルでやってみようかな?)
 そう思い始めていた矢先、何の前触れもなく、突然それはやってきた。
 (なんだか妙だな。今日は動悸がする。それにあそこが濡れてきたみたい)
 訳がわからないけれど行けそうな気がした。ボクは、ベッドの上で雑誌を読みながら寛いでいた桜井にボクは抱きついた。
 「真美、どうしたんだ?」
 「今日は行けそうな気がするの。抱いて」
 「今までは行ってなかったのか?」
 「そんなことはいいから、早く!」
 ボクは桜井に跨り、ボクの中に導いた。容易にボクの中に入ってきた。
 「ほほう。ずいぶんと濡れてるじゃないか」
 笑みを浮かべて桜井は腰を突き上げてきた。
 「ああ、感じる。感じる。ああ、行きそうだわ。行きそう」
 グワッと上ってくる。けれど、最後まで行き着かない。どうしても行けないで、ジリジリしていると、桜井は体位を入れ替え、正常位でボクを突いた。
 「あ、ああ。行きそう。行きそう。あ、あっ! あっ! あっ! ああん・・・」
 ボクは桜井の背中に爪を立てた。意識が飛んだ。

 その日を境に、毎回行けるようになった。膣を使ったセックス、最高だ。
 「あん、あん、あん、あん」
 4月10日の夜、その日も桜井におねだりして抱かれていた。そして、桜井が爆ぜるとほぼ同時にボクも行っていた。
 ボウッとしながら、ベッドルームの入り口に誰かが立っているのに気がついた。
 「誰?」
 「俺だよ」
 横山だった。
 「どうしてここにいるのよ!」
 「そんなことはどうでもいい。女になって、ついに行くようになったようだな?」
 「あなたに何の関係があるのよ!」
 不安がボクを押しつぶそうとしていた。



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