第7章 閉じこめられ、弄ばれて

 昼食を食べながら、どうしてボクを女にしたか考えた。
 (・・ボクの口を封じるためだけなら、閉じこめるだけで充分だよ。どうして女なんだ?)
 どう考えても意味がわからない。手術室での太田の言葉を思い出す。
 (性転換手術を見たいだけにボクを女にしたのか? そうだとしたら、弁護士にあるまじき人権侵害だ。いずれにしても、今度会ったらぶっ殺してやる)
 考えながら食事を終えた。
 (ああ、眠い)
 昼食後の午後は1時間ばかり昼寝をしてしまうことが多い。あくびが出てきた。
 (太田が来るんだから眠っちゃ駄目だ)
 そう思うのだけれど、むやみに眠い。眼瞼がつぶれそうだ。ウトウトし始めたとき、病室のドアが開いた。
 「いよう。わたしの可愛い子猫ちゃん。元気だったかな?」
 太田だった。ボクは必死に目を開いて、毅然として太田に対峙した・・つもりだった。
 「おやおや。午後のお昼寝の時間かな? 邪魔をして悪かったな。退院の許可が下りたから迎えに来たんだよ。さあ、おいで」
 ベッドからまったく起き上がれない。
 「いやあ、時間通りですな」
 医者が入ってきた。
 「大変お世話になりまして」
 「とんでもないです。いい仕事をさせていただきました」
 「わたしはもちろん、美穂も喜んでいますよ」
 美穂って誰のことだとボクは朦朧とする意識の中で考えていた。
 「これは手術のお礼です」
 太田が、スーツの内ポケットから分厚い封筒を取り出して医者に渡した。空港でボクに見せた封筒の数倍はある封筒だ。
 「またどうぞというわけにはいきませんが、縁がありましたら」
 医者は笑顔を見せて、病室の外に向かって看護師に入るように命じた。車いすを押して看護師が入ってきた。
 看護師に抱えられて車いすに乗せられた。
 「お世話になりました」
 太田は医者に向かって礼を言い、看護師が押すボクの乗った車いすの横を歩いて玄関へと向かった。

 病院の玄関前に、ワゴン車が停まっていた。後部ドアの前に車いすが進むと、短髪の中年男が走り寄ってきて車いすをベルトで固定した。
 「いいですね」
 グワーンと音がして車いすが宙に浮いた感じがした。実際に宙に浮いていた。そしてゆっくりと車椅子ごとワゴンの中に吸い込まれていった。
 後部ドアが閉められ、男が運転席に、太田が助手席に乗り込んできてワゴンが動き始めた。
 車の揺れがゆりかごのようで、やがてボクは眠り込んでいた。

 大きな音と身体へのショックで目が覚めた。ワゴンから車いすが降ろされていた。玄関の感じからすると、別の病院へ連れてこられたようだ。
 「美穂ちゃん、病気はすっかりよくなった?」
 24、5くらいの看護師がボクに駆け寄ってきて笑顔で挨拶した。胸に田中小苗と書かれたネームプレートを下げていた。
 (どうしてボクのことを美穂って呼ぶんだ?)
 またしても訳のわからないことが起きていた。
 「さあ、病室へ行きましょう」
 田中看護師がボクの乗っている車いすを押す。太田はその後に続いているようだ。待合室、診察室を抜けて、重いドアが開かれてその奥に進んだ。
 ナースステーションらしき場所から医者らしい男が姿を現した。
 「早かったな」
 太田に声を掛ける。医者の顔を見てあれっと思った。太田に雰囲気が似ているのだ。
 「予定通りだ。純二、頼んだぞ」
 太田が医者に向かって純二と呼び捨てにした。太田の名前は太田純一だったはずだ。すると、この医者は太田の弟かもしれない。そう思って医者のぶら下げているネームプレートを見ると、間違いなく太田純二と書かれていた。
 車いすが移動し始めた。一番奥のドアが開かれる。ドアには鉄格子が入っていた。部屋の広さは6畳ほど。左の奥にベッドが置かれていた。
 「木村! ボウッとしてないで少しは手伝ってよ」
 田中看護師の後ろにもうひとりいるようだ。すぐにボクの目の前に木村と呼ばれた人物が回ってきた。30ほどの男性だ。ボクをひょいと持ち上げてベッドの上に移した。
 「美穂ちゃん。お着替えしましょう」
 田中看護師がボクの着ていたワンピース型の病衣を裾からまくり上げて頭から抜き取った。
 「あら? ブラ、付けてないの? 年を取ったら垂れちゃうわよ」
 軽口を言いながら、木村看護師に向かって病衣を取ってよと命じた。田中看護師は木村看護師より若く見えるし、女性なのに男性に向かってずいぶん横柄な口を叩くんだなとぼんやりと思っていた。
 ピンクからブルーの病衣に着替えさせられてベッドの上に寝かされ布団を掛けられた。着替えさせられるとき、木村看護師が、ジッとボクの乳房を見つめていた。
 「じゃあ、美穂ちゃん。夕食までごゆっくりね」
 バイバイと手を振って二人は病室を出て行った。ドアが閉まり、そして鍵が掛けられた。再びボクはどこかの病院に閉じこめられてしまった。

 1時間ほどして、田中看護師がアルマイトのトレーに載せた夕食を持ってきた。ボクはまだ眠くてぼんやりとしていた。
 「30分したら下げにくるから食べておくのよ」
 言い残して病室を出て行った。しかし、30分たっても完全に目が覚めない。この眠気は恐らく昼食に薬を盛られたせいだとわかった。
 結局夕食には手を付けられず、田中看護師がトレーを下げに来たのにも気づかずにボクはずっとベッドの中で眠っていた。
 恐らく真夜中、ボクは目が覚めた。強烈な尿意に襲われたからだ。ベッドが置かれている隅とは反対側に小さなドアがあり、開いてみるとトイレだった。
 病衣の裾をまくり上げて、和式のそのトイレに跨って小便をした。小便が跳ねてくるぶしを濡らした。ティッシュを丸めて取り、あそことくるぶしを拭いた。何度拭いても、あそこを拭くときの違和感はぬぐえ去れない。
 立ち上がるとき、あそこに挿入されていたシリコンのダイレーターが便器の中に抜け落ちた。ボクはそれをじっと見つめ、拾い上げてタンクの上に置いておいた。
 トイレを出て、病室の入り口にあるドアノブを回してみた。回るはずもなかった。力任せに引っ張ったり押したりしてみたけれど、びくともしない。ドアを蹴飛ばしてみたけれど、虚しく響くだけだ。
 「誰か! 誰かいないのか!」
 力の限り叫んでみた。どこからかアアーアアーと叫ぶ声が聞こえてきた。
 「おおい! 誰か! 誰か! 誰かここへ来てくれ!」
 30分は叫び続けただろう。突然ドアの目の高さにある鉄格子の填った小さな窓が開いた。
 「静かにしないか!」
 いがぐり頭のゴリラのような男がつばを吐きかけんばかりにボクに命じた。
 「太田を、太田純一を呼んでくれ!」
 「静かにしろと言ってるだろうが!」
 バシャンと小窓が閉じられた。足音が去っていく。
 「待ってくれ! あんたでもいい。ここから出してくれ!」
 返事はなく、悲鳴に似た叫び声だけがどこからか聞こえてきた。
 「くそ! ここはどこだ。どうしてこんなところにボクを閉じこめたんだ」
 突然ドアがガシャッと開いた。助けが来たと思ったら、先ほどの男だった。白衣を着ている。男も看護師のようだ。
 「ここから出してくれるんだね?」
 男はボクの問いには答えず、黙ったままボクに近寄ってきた。アッと思ったときには腕をねじり上げられていた。
 「何するんだよ!」
 男は無言のまま、ボクをベッドの上に押し倒した。頭を後ろに回してみると、男は注射器を手にしていた。
 「や、止めろ!」
 右のお尻に鋭い痛みが走った。すぐに鈍い痛みが生じ、何かを注射されたことを知った。男がボクから離れ、ドアから出て行った。
 (何を注射したんだ?)
 起き上がって尻を揉む。揉んでいるうちに視界がぼやけてきた。
 (睡眠薬か?)
 起きていられなくなり、ボクはベッドの上にばったりと倒れた。

 ドアが開かれる音で目を覚ました。イヤ、少し前から目は覚めていたようだけど、ぼんやりした状態で、起きているのか眠っているのかわからなかったのだ。
 「美穂ちゃん、昨夜は騒いだそうね」
 入ってきたのは田中看護師だった。
 「だめよ。おとなしくしてなきゃ。お陰で、食事を食べさせてあげないといけなくなったでしょう? 木村! さっさと美穂ちゃんを起こして支えてよ」
 膨れ面をした木村看護師がボクの上半身を起こして、肩を抱いて倒れないように支えた。木村看護師がスプーンでどろりとしたものをボクの口に運ぶ。
 こんなもの食べてやるものかと頭では考えていた。けれど、口に入れられたとたん飲み込んでいた。理性が空腹に負けた瞬間だった。ボクは与えられたどろどろの食事をすべて平らげてしまった。
 片付けを始めた田中看護師のネームプレートをじっと見た。最初は焦点が合わなかったけれど、しばらくして焦点が合った。
 (太田精神科病院? 鉄格子の入った部屋。ここは精神病院の閉鎖病棟なんだ。気が狂って外に出せない患者ばかりを収容している病棟なんだ。ああ、なんてことだ。ボクを女にした上に、口封じのためにここへ閉じこめておくつもりだ)
 絶望がボクを襲っていた。
 (口封じのために閉じこめたのはわかる。しかし、ボクを女にした意味がわからない。どうしてだ?)
 いくら考えてもわからなかった。
 「おりこうさんね。さあ、歯を磨きましょう」
 トレーをドアのそばまで運び、歯ブラシに歯磨き粉を付けて戻ってきた。そうしてボクの歯を磨いた。薬が効いているせいだろう。ボクは田中看護師の思いのままに動いていた。
 「次はトイレに行きましょう。お漏らししたら、おむつを穿かせるわよ。おむつなんて穿きたくないでしょう? 木村! さっさと立たせてよ。もう! 言わないとできないんだから」
 木村看護師は、ボクの腋の下に手を入れてボクを立たせ、トイレへと歩かせた。トイレに立たされて、田中看護師がショーツを下げて病衣をまくり上げる。
 「美穂ちゃん、座って。はい、しいー」
 赤ちゃんに言うように命じた。他人に見られながら小便をするなんてイヤだったけど、小便がほとばしり出ていた。
 田中看護師がティッシュでボクのあそこを拭き、木村看護師に命じてボクを立たせショーツをあげた。
 「さあ、ベッドに運んでちょうだい」
 木村看護師がボクを運ぼうとしたとき、田中看護師があらと声を上げた。
 「こんなところにほったらかしにして。これは抜いちゃ駄目だって言われているでしょう? 病気が再発するわよ」
 シリコンのダイレーターをボクの目の前にかざして薄笑いを浮かべた。
 「木村! 早くベッドの上に寝かせて」
 「わかってるよ」
 「わかってないから言ってるんでしょう?」
 この二人は仲が悪そうだ。木村看護師はかなりぶすっとしてボクをベッドの上に放り投げた。田中看護師はダイレーターを手洗いで洗ってから持ってきた。
 そして、田中看護師が病衣をまくり上げてボクの穿いているショーツを再び下ろした。
 「木村。あんたに入れさせてあげようか?」
 「お、俺がですか?」
 「イヤならいいんだよ」
 「やるよ。やらせてくれ」
 田中看護師がボクに左の膝を支える。木村看護師が右の膝を支えて、ダイレーターをボクのあそこに当てた。
 「もう少し下じゃないの?」
 「わかってるよ。ここだろう?」
 ぐいと押される。痛みが走り、ボクは痛いと叫んだ。
 「ほら! もう少し下だって。あんた、したことあるの?」
 「ば、馬鹿にするな! 俺だって」
 「だったら、さっさと入れなさいよ。ホント、愚図なんだから」
 木村看護師は入口を捜していた。そして、ついに探し当てて押し込んできた。
 「これって、ペニスそのものよね。木村。入れるだけじゃなくて、入れたり出したりしてあげたら? 美穂ちゃん、喜ぶかもね」
 「い、いいのか? そんなことをして」
 「誰も見てないでしょう? 木村とわたしのヒ・ミ・ツ。だから、さあ、やって」
 木村看護師はダイレーターを抽送する。しばらくそうされていると、ふわっと浮いた感じがして気持ちがよくなってきた。
 「あれあれ。美穂ちゃん、感じているみたいよ」
 田中看護師に侮蔑の表情が見えた。ボクが性転換者だと知っていてこんなことをやっているのかどうかわからないけれど、ともかくボクを辱めようとしていることはわかった。
 15分近くそうされていた。ボクはついに達して身体を痙攀させた。
 「ははは。行ったわ。行った。こんな作り物で行っちゃったわ」
 笑いながら田中看護師は出て行った。木村看護師はボクのショーツをあげて、ボクの唇にそっとキスしてから出て行った。
 惨めだった。死んでしまいたかった。けれど、それこそが太田の望んだことだと感じた。自分の手を汚さず、耐えきれなくなってボクが死ぬのを待つつもりだ。だから、涙を流しながらもボクは耐えた。

 しばらくして田中看護師が注射器を手にして戻ってきた。
 「騒いだから、しばらく注射しろってさ。手がかかって困るんだけどなあ」
 ブツブツ言いながら、ボクの肩に注射していった。この注射は夜中に打たれたものよりは弱かったようだけど、意識はぼんやりとし、身体の自由はきかなかった。
 昼食も夕食もどろどろとしたものだった。同じように木村看護師がボクを支え、田中看護師がスプーンでボクの口に食事を運んだ。そして、木村看護師がダイレーターでボクを弄び、田中看護師はその様子を見て笑った。
 消灯時間に別の看護師がやってきて、ボクのお尻に注射していった。朝方、田中看護師に打たれたものと同じだと感じた。

 毎日、朝と寝る前に注射され、朦朧とした状態で、どろどろの食事を与えられ、そしてダイレーターで弄ばれた。毎回行かされたけれど、それは薬のせいだと自分に言い聞かせた。そう思うしか、この現状を受け入れられなかった。
 およそ10日がたった朝、田中看護師が持ってきたのは注射器ではなく錠剤とカプセルだった。
 「さあ、これを飲んで」
 口の中に押し込まれて水で流し込まれた。朝6個、昼4個、夕6個そして寝る前に3個の薬を飲まされた。
 注射以上に意識は朦朧とし、身体の自由がきかなくなった。
 「もう! 薬をやり過ぎよ。こっちの苦労もわかって欲しいわ。先生に言ってやろう」
 田中看護師は怒りをボクにぶつけた。それはそうだろう。ボクはしばしば失禁し、小便まみれ、糞まみれになったからだ。だから、素っ裸にされてベッドの上に放置され、ついにはおむつを当てられてしまった。
 そんなひどい状態だったけれど、薬のせいで恥ずかしさも惨めさも感じなかった。ボクは生きる屍と化していた。
 どれくらいたっただろうか? ある日から飲まされる薬の数が減った。田中看護師の訴えがようやく届いたのだ。
 けれど、ボクの朦朧状態にはあまり変化がなかった。相変わらず人形のような状態だった。
 「ああ、もうイヤ! 担当を変えて貰うわ」
 田中看護師は息巻いたけれど、担当が変わることはなかった。

 秋が深まったある日の午後、ドアが開いて白衣ではないスーツ姿の人物が入ってきた。
 「美穂ちゃん、元気だったかな?」
 焦点が合わないからわからないけれど、声でわかった。太田だった。飛びかかって絞め殺したかったけれど、身体はフラフラと揺れるばかりだった。
 太田がボクの目の前に手をかざして左右に振り、続いて入ってきた太田純二に向かって言った。
 「わたしだとわからないようだな?」
 わかっているけれど、それを表に現せないのだ。
 「だから言っただろう? もはや殺してしまう必要はないって」
 殺すという言葉を聞いて内心びくりとしていたけれど、ボクの表情には出なかったようだ。
 「そうだな」
 太田はボクの乳房をむんずとつかみ、さらにボクをベッドの上に突き倒して病衣の裾から手を入れた。クロッチを横に寄せて、荒々しく膣の中に指を入れてきた。
 「ああん」
 ボクは反応して声を上げて腰を浮かした。
 「ほう。こんな状態でもちゃんと反応するんだな?」
 「意識とは関係ないからな」
 「もはや、完全に人形だな?」
 「だから言ってるだろう? このまま死ぬまでここに閉じこめておけばいいって」
 「しかし、万が一と言うこともある。ちょっと薬の量を増やしてやれば、あの世へまっすぐだろう?」
 恐ろしいことを簡単に言う。
 「兄さん、曲がりなりにも俺は医者だよ。故意に殺すなんてできないよ」
 太田純二の方が幾分はまともだ。
 「おまえは甘い。そんなことを言ってると、手痛いしっぺ返しを受けるぞ」
 「兄さんが何と言おうと、このまま閉じこめておく」
 太田は舌打ちをする。
 「わかった。おまえの意見を尊重しよう。ただし、ちょっとでもおかしな素振りが見えたら、殺すんだぞ。俺とおまえのためだ」
 「わかったよ」
 話ながらも太田はボクの膣の中に入れた指は動かし続けていた。
 「あん、あん、あん、あん」
 「いい声で泣くじゃないか」
 性転換手術とともに、声帯もいじられていた。低い声を出しても女の声に聞こえるようになっていた。
 「結構締まるんだな?」
 太田純二の方を振り返って尋ねた。
 「知らないよ、そんなこと」
 眉を顰めて答える。
 「試してみてないのか?」
 「馬鹿なことを言うなよ。そんなこと、するはずがないだろう? そいつは男なんだろう?」
 「今は女だ。面白そうだぞ。やってもいいか?」
 「どうぞ、ご勝手に。俺は院長室に戻っている」
 太田純二はさっさと病室を出て行った。太田はすぐにスーツを脱ぎ始めた。
 「美子そっくりになったな。指で感じているようだったが、手術してすぐにここに閉じこめたから、まだ処女だよな。ふふふ。性転換を指示したわたしに処女を奪われる気分はどうかな? 聞いてもわからないか」
 ショーツが引き下ろされた。両足が抱えられ、あっという間に押し込まれた。心は泣いていた。けれど、身体は感じていた。
 突きながら太田はボクの乳房を揉みしだき、唇を割って舌を差し入れてきた。心ならずもボクはその舌を吸っていた。
 「おお、締まる。締まる。あの医者の腕はたいしたものだ。おお、もう耐えられんぞ」
 ボクの中で太田が膨らんでくるのを感じた。そして跳ねた。何度も。ボクもその瞬間に達し、身体を仰け反らせて震わせていた。
 「惜しい。まったく惜しい。これまでのことがなかったら、連れて行って愛人にしたいくらいだ」
 スーツを着て、ボクの頬にキスすると太田は病室を出て行った。泣いてはいないと思ったけれど、涙が頬を伝わって落ちていた。

 これから先、ボクは精神病院の閉鎖病棟に閉じこめられ、大量の薬を盛られて廃人のように生きていく他ない。木村に性器を弄ばれ、もしかすると他の男性看護師たちの性のはけ口にされるかもしれない。いやそれどころか、下手をすれば、事故に見せかけられてこの世から抹殺されてしまうかもしれない。
 こんな生き地獄にボクを落とした太田が憎い。ボクを女にした理由なんてもはやどうでもよかった。太田に復讐してやりたい。ただそれだけを思っていた。



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