男はエレベーターの扉が開くと、外の様子をきょろきょろと見回してから廊下に歩み出た。
顔をブルゾンの襟に隠すようにしてこそこそと歩き、ある部屋の前に立った。
男はもう一度左右の様子を窺ってからチャイムを押した。
いつもすぐに返事があってドアが開くのに、何の音沙汰もなかった。
男は首を傾げながらもう一度チャイムを押した。
やはり返事がなく、男はいらだちながらドアを叩いた。
「くそっ!! どうして出ないんだ?」
舌打ちしながら、郵便受けの小さな窓を押し開いて部屋の中を窺った。
「な、なんだ!」
真っ赤なネグリジェから二本の足が出ているのが見えた。宙に浮いた真っ白な足が。
「く、首を吊ってる!」
男は慌てて階段を駆け下りていった。