第13章 女にされて

 壮一は地獄の日々を送っていた。こんなことなら、あんな事件を起こさなければよかったと後悔の毎日だった。犯罪とは割に合わないものと言うことが壮一には身にしみてよくわかった。しかし、後悔しても地獄に継がれた獄卒の日々は変わらなかった。
 その日壮一は、ギャグボールを噛まされて仰向けに磔にされていた。伸びては剃られ伸びては剃られの連続の陰毛がその日も下卑た男によって剃り落とされた。
 その後に起こることは大体予想が付いていた。鞭打たれ、蝋燭をたらされたあと、お客のひとりのペニスかディルドーを使って行かされるのだ。
 ところが予想に反して、周りにいた男たちの姿が壮一のそばから消えてしまった。
 「本日のゲストを紹介いたします」
 司会者の声が響き渡った。
 「ドクター・ホールメーカーです。拍手を持ってお迎え下さい」
 何事だろうかと頭を上げてみると、マスクを被って白衣を着た男が入ってきた。その男は、手術用の手袋を手際よく填めると、壮一の股間に何かを塗り始めた。場内は静まりかえった。
 「さあ、準備ができました。今日、郷子は男から解放されます」
 突然やんややんやの声が挙がった。郷子とは壮一のこの場所での名前だ。『男から解放される?』とはどういうことだと思った瞬間、股間に激痛が走った。白衣の男が手を高く振り上げるのが見えた。その手にはメスが握られていて、血が滴っていた。
 「ギャアアアアアア」
 壮一の悲鳴がギャグボールの間から漏れる。激しい痛みに気を失いかけたとき、白衣の男が、血の付いた固まりを観衆に向かって見せているのが目に入った。
 「さあ、取れました。これで郷子は男ではなくなりました。新しい郷子の誕生に拍手、拍手」
 会場から拍手がわいた。壮一はあまりの痛みに気を失った。

 ジンジンした痛みに目が覚めた。股間を覗き見ると、睾丸がなくなってシワシワになった陰嚢の真ん中にテープが一枚貼られていた。睾丸を切り取られてしまったことを思い出して、思わず涙がこぼれた。絵理子として生きていこうと決めたとき、いずれは性転換をとも考えていた。しかし、こんな形で睾丸を取られてしまうとは思ってもみなかった。
 ガタンと部屋のドアが開いて、司会者兼オーナーの大野淳介が入ってきた。
 「ほれ、薬だ。化膿止めと痛み止めだ。ちゃんと飲めよ」
 「ひどい・・・・」
 「ひどい? おまえは、そうされるためにここにいるんだ」
 壮一は涙を流し続けた。
 「来週は麻酔をしてやるから痛くはないぞ」
 「麻酔って、いったい何をやる気なの?」
 「来週の催しは、おまえの性転換手術を皆さんにお見せするんだ」
 「性転換手術・・・・」
 力が抜けた。
 「そうだ。性転換手術を目の前で見られるなんて滅多にないことだ。入場料を倍にしたが、予約で一杯だ」
 壮一にはもう言葉がなかった。イヤだと言っても逃げ出すことはできない。喚けばお客が喜ぶだけだ。
 「ただでやってやろうと言うんだ。ありがたく思えよ」
 そう言い残して、オーナーは部屋を去っていった。

 一日休みをくれただけで、その翌日からショーにかり出された。よくもこれだけの男たちが通ってくるものだと感心するくらいだ。
 中には毎日のように通ってきて、壮一のショーに参加する男もいた。そんな男の中には、気に入ったM嬢を身請けするものもいるという。壮一はそんな男はいないものかと目星を付けた男に接近を試みたけれど叶わなかった。どうやら、洋治と絵理子が手を回しているようだった。
 そして、ついにはその日、大野が壮一に性転換手術を受けさせるといった日がやってきた。自分の意志ではないことから、壮一は半狂乱になって抵抗したが、お客を含めた男4人がかりで台に縛り付けられてギャグボールを噛まされてしまった。
 「動くなよ。動いたら、下半身が永遠に麻痺してしまうぞ」
 そんな脅し文句の中、背中に麻酔をされた。すぐに下半身がしびれて動かなくなった。
 「さあさあ、皆様お待ちの性転換手術をお目にかけます。今日、女になるのは、皆様ご存じのニューハーフM嬢・郷子です。郷子が女に生まれ変わっていく様子をとくとご覧下さい!!」
 拍手が沸き起こった。近くで見せろの声が挙がる。司会者が、この線までなら許可しますと返事をすると、お客たちがぞろぞろと壮一の周りに集まってきた。
 「先週睾丸を取った傷はすっかり綺麗になっていますが、これをもう一度切り開いて、腟となる穴を開けます」
 壮一には、痛みは感じないが触るのはわかる。ジジジと機械の音がして、肉の焼ける臭いが鼻を突いた。イヤな臭いだ。身体が押されたり持ち上げられたりする。
 「さあ、穴が開きました。中を覗いてみてください。これなら、どんな巨根の持ち主でも受け入れられるでしょう」
 気配からすると、お客たちが順番に壮一に竅たれた穴を覗き込んでいるようだ。
 「次は、ペニスの皮を剥いで、それから亀頭の一部を用いてクリトリスを作ります。感じるクリトリスにするために神経と血管は残すようにします。ここがドクターの腕の見せ所です」
 何かが引っ張られた感触がした。時々ジジジと同じ音がする。
 「さあ、クリトリスとなる部分を除いてペニスが切り取られました。これから、クリトリスと尿道の出口を縫合します」
 何も感じない時間が過ぎ去っていった。
 「陰嚢の皮を切り取って大陰唇を作りますよ。余った皮は膣を作るのに使います」
 説明が続く。壮一は他人事のように聞いていた。
 「ペニスの皮は、小陰唇と膣の壁を作るのに使います。ただいま、余った陰嚢の皮とペニスの皮を連結しているところです」
 手術器具らしい金属の触れ合う音が耳に届いてきた。そして、解説がないまま時間が過ぎていった。
 「さあ、できあがりました。これをひっくり返して、初めに開けた穴の中に入れると、手術はもうすぐ終わりです」
 医者はまだ何かをしていたが、お客たちはゾロゾロと客席に引き上げ始めた。
 「はい。郷子は立派に女に生まれ変わりました」
 司会がそう宣言すると、パチパチと拍手が起こった。
 「もういいぞ。早くどこかへ連れて行け。次を出せ」
 そんな言葉が投げかけられた。
 「はいはい。そういたしましょう」
 壮一の載った台が動き始めた。
 「ただいまドクターにお聞きしましたところ、順調にいけば、郷子は6週間後には、今日作られた新たな器官を使うことができるそうです。さて、郷子の最初の相手になりたい方はおられますか?」
 運ばれながら客席を見遣ると、手がパラパラと上がっていた。
 「お一人ではない。そうですか。それでは入札と参りましょう。それでは5万から」
 そんな声を聞きながら、壮一は部屋へと運ばれていった。

 麻酔が切れてくると、耐えがたい痛みが壮一を襲ってきた。壮一はベッドの上でのたうち回った。痛み止めはほとんど効果がなく、壮一は丸一日呻き続けた。
 オーナーはそんな壮一を見ては薄笑いを浮かべていた。痛み止めが痛め止めでないことに気づいたのは、二日ほどたって痛みが遠のいてきてからだった。オーナーは壮一が悶え苦しむのを楽しんで見ていたのだった。
 手術して一週間目、いつもは看護婦が付け替えにやってくるのに、その日は医者がやってきた。
 「今日は、膣に詰めたガーゼを取るからね」
 「痛いんですか?」
 「かなりね」
 「取らないといけないんですよね」
 「もちろんだよ」
 医者がガーゼを取る準備をしていると、オーナーが部屋に入ってきた。
 「先生。わたしにやらせて貰っちゃいけませんか?」
 壮一は抗議したが、医者がいいよと返事をして、オーナーが膣の中からガーゼを引き出し始めた。
 「痛いぃぃぃ・・・・」
 壮一が泣きわめいても、オーナーは止める気配を見せずにドンドンガーゼを引き抜いていった。
 抜けてしまうと、激しい痛みは治まってきたけれどジンジンとした痛みが続いていた。
 「さて、せっかく作った膣が狭くならないように拡張して貰わないといけないんだ。これで毎日拡張するんだよ」
 医者は壮一の目の前に、白く細長い棒を差し出して見せた。
 「こうやるんだよ」
 医者が壮一の膣の中にその棒を差し込んだ。
 「痛い、痛いです」
 「少しは我慢しないとな」
 「これは郷子にさせるんですか?」
 オーナーが口を出す。
 「もちろんだよ。それとも、あんたがしようって言うのか?」
 「しても問題ないんでしょう?」
 「ああ。しかし、面白くも何ともないぞ」
 「わたしには面白いんですよ」
 オーナーは舌なめずりをした。
 「虐めるのが商売なのはわかっているが、せっかく作った膣を損傷しないようにしてくれよ」
 「わかったよ」
 オーナーは医者からやり方を習っていた。壮一は諦めの溜息をついた。

 何が面白いのか、壮一にも理解できなかったが、オーナーは毎日一日4回、壮一の人造腟の拡張にやってきた。初めの頃は痛いばかりだったが、次第に痛みはなくなっていった。
 手術して一ヶ月がたって、鏡で覗いてみると、傷跡がまだ完全には癒えていないけれど、かなり綺麗に仕上がっていた。
 鏡に顔を映してみる。壮一が作り上げた他人の顔が映っていた。鏡を動かして身体を観察した。壮一はもはや完全に女になっていた。



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