わたしは、人間の言う神様である。
神様というのは、善を助け、悪を懲らしめるとされているが、現実はそうではない。
わたしの仕事は、ただ単に人間の生き様を見守ることだけである。
それだけのために、何故神様が存在するのかって? それは、わたしも知らない。
わたしは、生まれたときからそう言う仕事をしているだけだ。
「神様、どうか、わたしを助けてください」
「あんな悪いやつは、やっつけてください」
そんな願いをされたとき、ときには、善人に手を貸してやったり、悪人を懲らしめたりすることもある。
しかし、そんなことは滅多にしない。何故かと言うと、そんなことをすれば、自然の流れが変わってしまうからだ。神様といえども、歴史を変えたりすることはできない。たったひとりの人間を助けたために、その後の歴史が大きく変わってしまうことだってあるからだ。
ただ神様は退屈だ。毎日毎日、人間の生き様を眺めているだけなのだから。
そこで、ちょっと悪戯をしてみることにした。男と女を入れ替えてみるのだ。入れ替えたところで、歴史が変わるわけではないからだ。
ちょうど今、あそこでぶつかったふたり。あのふたりを入れ替えてみよう。どう言う反応を見せるか楽しみだ。