第8話 計画は破綻した

 「もう諦めなさいって、言ってるでしょう? いつまで泣いているのよ。泣いたって、明は戻ってこないのよ」
 アヤは、いつまでも泣き続けている。ほんとに、困った子だ。
 あの時、わたしが、ハーレム、わたしは明を閉じ込めて、妊娠可能な女とセックスさせていた場所を、そう呼んだ。そのハーレムを訪れたとき、アヤが、明の手を引いて出てきたところだった。
 明が、ガウンの裾を踏んで躓き、倒れた瞬間、瞬きしている間に、明はその場から消えてしまった。わたしの見ている目の前で・・・・。
 明が消えた場所には、ガウンだけが残されていた。アヤは、訳が分からず、周りを見回していた。
 アヤは、明が消えてしまったことを知ってから、ずっと泣いている。もう半日も、この状態だ。
 「明、明、明・・・・」
 「アヤ、明さんは、元の時代に戻ったのよ。ほら見てごらん」
 わたしは、データベースを開いて、アヤに見せた。
 「里見明、昭和49年7月12日生まれ。西暦2001年2月14日、御木本忍と婚姻。あの明さんに間違いないわ。元の時代に戻って、幸せになっているのよ」
 「返して、明を返してよ」
 「明さんがこの時代に来たのは、アクシデントだったのよ。元の時代に戻るのが、ほんとなの。諦めなさいって言ってるでしょう?」
 「諦めきれないわ。あんなに大きなひとは、誰もいないんだから・・・・」
 「あなたは、明さんを愛してるんじゃないわ。明さんのペニスが恋しいだけだわ」
 「そうよ。あの、大きいのがいいのよ。大きくなければ、感じないの」
 「アヤ、女の膣は、相手の大きさに合わせられるのよ。男のペニスが大きかろうと、小さかろうと、お互いの愛情が深ければ、女は絶頂を覚えるものなの。大きさばかりに捕らわれるのは、愛情がない証拠よ。そんなのは、娼婦と同じよ」
 アヤは黙ってわたしの言うことを聞いていた。それから、ポツリと言った。
 「そうかもしれない。わたし、ずっと、自分が達することばかりを考えていた。愛がなかったのね。だから、明はいなくなってしまったのね・・・・」
 「そうよ。それをあなたに知らせるために、いなくなったのよ」
 「・・・・わたしのせいで、赤ちゃんに、パパがいなくなって、可愛そうだわ」
 「・・・・あなた。できてるの?」
 「5ヶ月なの」
 「そうなの・・・・。でも仕方がないわよ。明さんは、永遠に戻ってこないわ」
 アヤは、また泣き始めた。そうか、アヤに明さんとの子供が出来ているのか。どっちだろうか? 男か? 女か? どんな子供が出来るだろうか? ペニスの大きな男の子か? それとも、クリトリスの小さな女の子か? 楽しみだ。

 里見明と関係を持った女性は、アヤを含めて612人になった。そのうち、609人の妊娠が確認されている。凄い確率だ。普通の男は、4,5日禁欲してセックスしても、5,6回に1回しか、女を妊娠させられないのに、里見明は、毎日3,4人の女を抱いて、その大部分を妊娠させてしまった。
 里見明と同じような、旧人類に似た子供が出来れば、今のような出生率の低下に歯止めがかかるだろう。20年先が楽しみだ。
 上手くいけば、冷凍保存しておいた里見明の精液を使って、人工授精で旧人類を復活させられる。

 アヤが、里見明の子供を産んだ。里見明が父親の第1号の子供だ。アヤがわたしに妊娠をうち明けた次の日に分かっていたことだが、産まれた子供は、女だった。しかもクリトリスの大きな女の子だった。ペニスの大きな男の子を期待したのに、残念だ。
 それから、2週間経って、里見明の子供の出産ラッシュになった。産まれる子供は、女ばかりだ。
 609人の妊娠のうち、無事出産にたどり着けたものは、601人。8人が、流産してしまった。流産したのは、みんな男の子だった。
 601人の子供のうち、何と女の子が550人を占め、男の子はわずかに51人だった。
 女の子は、他の子供とまったく変わりがなかった。小さなクリトリスではなく、大きなクリトリスを持っていた。しかし、男の子は、ペニスが大きいようだ。300人は産まれるはずだった男の子が、たった51人だったが、計画は上手く運ぶかも知れない。わたしは、子どもたちの、特に男の子の成長を楽しみに待った。

 男の子たちは15歳になり、第2次性徴が出てきた。胸は真っ平らではなく、少し大きくなっている。その他の外観は、他の男の子たちと変わらない。違うのは、ペニスの大きさだ。9センチから、13センチもある。平均11センチと言うところだ。
 里見明のペニスが、当時の男の平均ほどあれば、もっと大きなペニスを持った男の子が出来ていたのに違いない。ちょっと残念な気がするが、そんなことを言うのは、贅沢というものだ。少なくとも、今の男の子よりも、大きなペニスを持つ男の子が生まれのだから。
 女の子たちは、他の女の子と、変わるところはない。クリトリスも、標準の大きさだ。もちろん、現在の標準だ。

 神様、わたしのどこが悪かったのでしょうか?
 わたしの計画は頓挫した。51人の、大きなペニスを持つ男の子たちは、みんなインポテンツなのだ。宝の持ち腐れだ。見かけ倒しの張りぼてだ。しかも、全員、無精子症なのだ。もし何らかの手を使って、勃起させたとしても、妊娠させることが出来ないのだ。ノーベル賞は、もう貰えない。

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